実施可能要件
知財高裁 平成24年4月11日判決言渡 同日原本受領 裁判所書記官
平成23年(行ケ)第10146号,同第10147号 審決取消請求事件
「実施可能要件について
ア 本件各発明に適用される実施可能要件について
本件特許は,平成9年12月26日出願に係るものであるから,法36条4項が
適用されるところ,同項には,「発明の詳細な説明は,…その発明の属する技術の
分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ
十分に,記載しなければならない。」と規定している。
特許制度は,発明を公開する代償として,一定期間発明者に当該発明の実施につ
き独占的な権利を付与するものであるから,明細書には,当該発明の技術的内容を
一般に開示する内容を記載しなければならない。法36条4項が上記のとおり規定
する趣旨は,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が容易にその実施をすることが
できる程度に発明の構成等が記載されていない場合には,発明が公開されていない
ことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くこ
とになるからであると解される。
そして,物の発明における発明の実施とは,その物を生産,使用等をすることを
いうから(特許法2条3項1号),物の発明については,明細書にその物を製造す
る方法についての具体的な記載が必要であるが,そのような記載がなくても明細書
及び図面の記載並びに出願当時の技術常識に基づき当業者がその物を製造すること
ができるのであれば,上記の実施可能要件を満たすということができる。 」