ゲームボーイアドバンス事件
知財高裁 平成18(ネ)10007 平成18年09月28日判決
p23-24
「本件特許発明の技術的範囲の解釈について
( ) 特許法70条1項は,「特許発明の技術的範囲は,願書に添付した特許請
求の範囲の記載に基づいて定めなければならない。」,同条2項は,「前項
の場合においては,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮して,特許
請求の範囲に記載された用語の意義を解釈するものとする。」と規定してい
るところ,元来,特許発明の技術的範囲は,同条1項に従い,願書に添付し
た特許請求の範囲の記載に基づいて定められなければならないが,その記載
の意味内容をより具体的に正確に判断する資料として明細書の記載及び図面
にされている発明の構成及び作用効果を考慮することは,なんら差し支えな
いものと解されていたのであり(最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判
決・判時781号69頁参照),平成6年法律第116号により追加された
特許法70条2項は,その当然のことを明確にしたものと解すべきである。
ところで,特許明細書の用語,文章については,①明細書の技術用語は,
学術用語を用いること,②用語は,その有する普通の意味で使用し,かつ,
明細書全体を通じて統一して使用すること,③特定の意味で使用しようとす
る場合には,その意味を定義して使用すること,④特許請求の範囲の記載と
発明の詳細な説明の記載とは矛盾してはならず,字句は統一して使用するこ
とが必要であるところ(特許法施行規則様式29〔備考〕7,8,14イ),
明細書の用語が常に学術用語であるとは限らず,その有する普通の意味で使
用されているとも限らないから,特許発明の技術的範囲の解釈に当たり,特
許請求の範囲の用語,文章を理解し,正しく技術的意義を把握するためには,
明細書の発明の詳細な説明の記載等を検討せざるを得ないものである。
また,特許権侵害訴訟において,相手方物件が当該特許発明の技術的範囲
に属するか否かを考察するに当たって,当該特許発明が有効なものとして成
立している以上,その特許請求の範囲の記載は,発明の詳細な説明の記載と
の関係で特許法36条のいわゆるサポート要件あるいは実施可能要件を満た
しているものとされているのであるから,発明の詳細な説明の記載等を考慮
して,特許請求の範囲の解釈をせざるを得ないものである。
そうすると,当該特許発明の特許請求の範囲の文言が一義的に明確なもの
であるか否かにかかわらず,願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記
載及び図面を考慮して,特許請求の範囲に記載された用語の意義を解釈すべ
きものと解するのが相当である。」とした。