コーシー列
Cauchy sequence
次のように特徴づけられる数列$ \{a_n\} をコーシー列と定義する:
任意の$ n,m\ge1 に対して、$ \lim_{n,m\to\infty}|a_n-a_m|=0
実数と複素数においては、コーシー列であることと収束列であることは同値 $ \left(\{a_n\} \mathrm{\ is\ Cauchy\ seq.}\iff \{a_n\} \mathrm{\ is\ convergent\ seq.}\right) \in\mathbb{R,C}
有理数まで狭めると$ \Rightarrow が崩れる
反例を挙げる
有理数で構成される数列$ \{a_n\} を:
$ \{a_n\}\coloneqq 1, 1.4, 1.41, 1.414, \cdots のように$ \sqrt{2} を意識して恣意的に定義する
任意の二項の差はいくらでも小さくできるので0に収束する
コーシー列であることが示せる
$ \lim_{n\to\infty}a_n=\sqrt{2} といいたいが、有理数の集合に$ \sqrt{2} は含まれていないので収束しない
同様の例を数式らしく表現する
有理数で構成される数列$ \{a_n\} をガウス記号を用いて: $ a_n\coloneqq\frac{\lfloor n\sqrt{2}\rfloor}{n} と定義する
nが10刻みで増加するようにすれば同じ例になる
実数と複素数において、コーシー列と収束列が同値であることを示す
1. 収束列$ \Rightarrow コーシー列を示す
$ \lim_{n\to\infty}a_n=\alpha なる収束列$ \{a\} を考える
このとき、$ \varepsilon>0 とすると、ある$ N\ge1 が存在して$ N を十分小さくとることにより:
$ n\ge N \Rightarrow |a_n-\alpha| が成り立つ
これにより、$ n,m\ge N のとき、任意の$ n,m に対して三角不等式を利用して: $ |a_n-a_m|\le |a_n-\alpha|+|\alpha-a_m|<\varepsilon+\varepsilon=2\varepsilon を得る
したがって、収束列$ \{a_n\} であればコーシー列である
2. コーシー列$ \Rightarrow 収束列を示す
1. コーシー列が有界であることを示す
$ \varepsilon>0 とすると、コーシー列の定義と三角不等式から、ある$ n\ge N が存在して:
$ n\ge N \Rightarrow |a_n|\le|a_N|+\varepsilon である
$ |a_n|-|a_N|\le|a_n-a_N|<\varepsilon を変形して得られるあんも.icon
$ M\coloneqq\max\{|a_1|,\cdots,|a_{N-1}|,|a_N|-\varepsilon\} のように$ M を十分大きくとることによって:
$ |a_n|\le M であり、これはコーシー列$ \{a_n\} が有界であることにほかならない
2. 有界な数列は収束部分列をもつことから、数列全体が収束列であることを示す
$ \lim_{k\to\infty}a_{n_k}=\alpha なる$ \alpha を考える
このとき、コーシー列の定義から、ある$ K\ge1 が存在して:
$ k\ge K \Rightarrow |a_{n_k}-\alpha|<\varepsilon である
ここで、$ \widetilde{N}\coloneqq \max\{N,n_k\} と定義し、$ n,n_k \ge \widetilde{N} に対して:
$ |a_n-\alpha| \le |a_n-a_{n_k}|+|a_{n_k}-\alpha|<\varepsilon+\varepsilon=2\varepsilon が成り立つ
ここがよくわかってないあんも.icon
収束部分列をもつが、全体では収束列ではない場合にはうまくいかない議論のはずなので試してみる
これは$ \lim_{n\to\infty}a_n=\alpha であることにほかならない
したがって、コーシー列$ \{a_n\} であれば収束列である
以上より、実数と複素数において、コーシー列と収束列が同値であることが示された$ \square