フルヘッヘッヘッ
https://www.youtube.com/watch?v=VcMb03FLoSk
Q:フルヘッヘッって何ですか?
A:曲名であり歌詞であり、人体の顔面に位置する隆起をめぐる情詩で、
「私は単なる部位の集合です」と嘆くエレジーです。
それは観客の歓喜をもって成立する逆説的哀歌です。
フルヘッヘッヘッ
まず「フルヘッヘッヘッ」という曲(?)にはいろいろなバージョンが存在するが、最も古いバージョンは「レベルストリート」というアルバムに収録されているバージョンだ。
「レベルストリート」ついては勝手に調べるがいい。私はこのタイトルは好かん。
最も古いバージョンは最初に正式リリースされたもののデモに当たる。
亀有のアジトでオープンリール、4トラックのマルチレコーダーで録音された。
全ての楽器はヒラサワが演奏している。
ベースドラムのように聞こえる音は段ボールを指で軽く叩いた音。バラツキがあるので機械じゃないことが分かる。
やや右側に聞こえる段ボール音の残響は、石油ストーブの熱反射板で作られている。
段ボールを叩いた音を石油ストーブの熱反射板に貼り付けた小さなスピーカーで再生し、反射板が振動する音をマイクで拾ったもの。
左側で微かに聞こえるハイハットもどきの、チャッチャッという音は、手のひらに十円玉を二枚重ねて乗せ、手の甲を下から叩いた時に十円玉同士がぶつかり合う音をマイクで拾ったもの。
曲中で鳴っている全ての音の中で最も実際の音が小さいのはこの2つの偽ドラム音だ。
これなら消防車も入れない下町密集地で真夜中に録音できる。
ベースやギターや手拍子にはショートディレイ(短い反射音)が付随している。デジタルディレイなど無い時代にこの効果はテープレコーダーの変異種、テープエコーによって実現されている。
テープエコーは奏でた音を奏でると同時に磁気テープに録音し、コンマ数秒後にそれを再生して残響のように聞かせる機械である。
かつてP-MODELはHEAVNIZERという偽サンプリング機械を使用していたが、それはテープエコーを更に改造したものであった。
そもそもこの曲は段ボールと十円玉のドラムで曲が成立するか、という実験の成果物質なのである。
実験は亀有のアジト、深夜に行われた。一人で。
賢明な諸氏は既にご推察の通り、フルへっへっへと歌う(?)声がウィスパーヴォイスなのは、深夜の住宅密集地で出せる声として唯一選択可能な発声ということである。
へっへっへっへとビクビクしながら歌い、ちょっとぐらい大丈夫だろうと一瞬声量を上げた部分が
も~
のパートである。
その時、隣家の犬が吠えた。
確かその声が微かに録音されたいたと思う。
絞め切った窓。高湿度の四畳半で
へっへっへとやるのはなかなか辛い。
曲は明け方完成し、床に崩れるようにして寝た。
目が覚め、これじゃイカンと風呂に入り、また力尽きて床寝した。
歴史は繰り返す。
またこんど!!