力学系の勉強 (BIFURCATION THEORY)
https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/511qMG7q72L._SX377_BO1,204,203,200_.jpg
分岐 (bifurcation)理論は力学系のパラメータが変化したときの周期点の構造の変化を調べるのが目的である。
ここでは次のような2変数関数を主体に考える。
$ G(x,\lambda)=f_\lambda(x)
ここで、固定した$ \lambda に対して$ f_\lambda(x) は$ C^\infty 級関数である。このようにパラメータのある関数の例は次のようなものである。
1 $ F_\mu(x)=\mu x(1-x)
2 $ E_\lambda(x)=\lambda e^x
3 $ S_\lambda(x)=\lambda\sin(x)
4 $ Q_c(x)=x^2+c
例(周期倍分岐)
族$ E_\lambda(x) について考える。いま、$ \lambda < 0 と考える。この集合族は$ \lambda=-e のとき$ E_\lambda(-1)=-1 で$ E_\lambda'(-1)=-1 であるから、$ -1 は$ E_\lambda の非双曲的固定点である。そして、$ \lambda > -e のとき唯一つの吸引的な固定点が存在する。逆に$ \lambda < -e のとき唯一つの反発的な固定点が存在する(演習問題.3)。
$ \because
固定点を$ p とすると、$ E_\lambda(p)=\lambda e^{p}=p より$ \lambda = p e^{-p} である。ここで、$ W(x) を$ x e^{-x} の逆関数とすると、$ p = W(\lambda) である。$ \frac{d}{dx}x e^{-x}=e^{-x}(1-x) である。ここで$ \lambda < 0 のとき$ p<0 であるから$ (x e^{-x})'(p) は常に正であり、その逆関数$ W もそうであることがわかる。ゆえに固定点は存在すれば一意である。存在することは$ xe^{-x}の定義域が実数全体であることを踏まえれば明らかである。
$ E_\lambda'(p)=\lambda e^p=p=W(\lambda) である。ここで$ W は単調増加することと$ W(-e)=-1 であることを考慮すれば、ただちに$ \lambda > -e のとき$ E_\lambda'(p)>-1 ,$ \lambda < -e のとき$ E_\lambda'(p)<-1 を得る。
それゆえ、$ \lambda = -e のとき$ E_\lambda の固定点の周辺のダイナミクスは変化を経験する。しかし、起こることはこれだけではない。$ E^2_\lambda のグラフについて考えてみる。すると、簡単な計算によって$ E(x)<-1 ならばグラフは下に凸で、$ E(x)>-1 ならば上に凸であることが分かる。従って$ E^2_\lambda は$ \lambda が$ -e を下回ることによって新しい2つの固定点を持つようになる。$ E_\lambda はただ一つの固定点しか持たないからこの二つは実際には周期2の周期点である(周期倍分岐)。力学系的には周期倍分岐は次のことを巻き起こす。
1. 固定点が吸引的から反発的に変化する。
2.新しい周期2の軌道が誕生する。
上の例において、固定点が「吸引性」を失うに伴って周期2の軌道が「吸引性」を獲得したことを記しておく。