利己的な遺伝子
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長かった。ダーウィンの進化論(種の起源)において利他的行動をする遺伝子が自然淘汰で残る理由は謎だが、遺伝子の利己性によって単純明快に説明できる、みたいなことがかなり書いてある。数学の知識を必要とせず、全ての章において数式を使わずに説明されているおかげで、自分でも強引に(理解度を無視して)読み進めることができた。数式を使われると、なにはともあれ読んでいく的なことが難しくなる(新版 量子論の基礎を挫折した並の感想)。40周年記念版へのドーキンスさんのあとがきで、タイトルは「協力する遺伝子」とか「不滅の遺伝子」とかの方がよかったかも、みたいに書いてあってよかった。さらに、40周年版への訳者のあとがきで、日本では最初「生物=生存機械論」というタイトルで刊行された理由が明かされていて、よかった。当時の日本の生態学界隈の状況を顧みて、原題の挑戦的なタイトルをそのまま「利己的な遺伝子」と訳して出版したら、門外漢が押し寄せて誤読、混乱、悪用が起こるに決まっているので、
まずは研究者にしか魅力的に見えないようなタイトルで出版する
という提案で、「生物=生存機械論」という謎のタイトルになったらしい。その配慮たるや、素晴らしいと思った。原題は、ミーム性が高い、高すぎるので、訳者の判断で、反ミーム性で打ち消しておくという感じ。第2版の出版時は、状況が落ち着いたので満を持して「利己的な遺伝子」というタイトルに直したところ、売り上げは爆増したという。そう、ミームという単語の誕生神話みたいなもの、原典に触れられたのもよかった。この本、補注が本番みたいな感じ、補注の皮肉感やたっぷり感で一向に本文が進まないわけだが、ミームのところの補注で「俺が考えたミームという単語は、今になって思えば実に良いミームだったようだな、今ではオックスフォード辞典にも収録されるし(ドヤ)」みたいなことが書いてあって、よかった。頭がいい人(?)ってこういう、再帰的な皮肉(?)を好むよな。まあ、一番大きい感想は「長かった」である。
ドーキンスの生物学書『利己的な遺伝子』について、2018年に進化生態学者の岸由二は本書を名著と呼び四〇年を生き抜いた本書は、現代の進化論的生態学の視野をみごとに紹介する学術書、当該分野の研究・批評を志す者の必読の入門書として、評価も確定したと述べている。2016年『ゲノム生物学(Genome Biology)』の論説によれば、本書はダーウィンの進化論を論理的に結論づけた本であり、おそらく本書の不朽の重要性を最も良く示しているのは、何世代もの科学者たち──この論説の著者らを含む──への圧倒的な影響力であり、本書は科学者たちを刺激して遺伝学、ゲノム科学、進化論を探求させた。同年『ネイチャー』における科学ジャーナリストのマット・リドレーによればドーキンスが支持して具体化した遺伝子中心の進化観は今や、進化論においても、野生動物ドキュメンタリー番組など一般向けの自然史解説においても、中核をなしている。
The Selfish Gene
著者 リチャード・ドーキンス
発行日 イギリスの旗 1976年
日本の旗 1980年
発行元 オックスフォード大学出版局
ジャンル 進化生物学・進化生態学
国 イギリスの旗 イギリス
言語 英語
形態 著作物
次作 延長された表現型 : 自然淘汰の単位としての遺伝子
利己的遺伝子 - Wikipedia
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読書メモ
第6章 遺伝子道
雌は雄に比べて、子に対して利他的な振る舞いをしやすい。雌の場合は、子に対して自分の子だという確信が持てるが、雄はそうではないので。という話、びっくりした。補注にも詳しく、科学的にも(?)実証されているようだ。父親の子育てへの無関心とか不参加っていうのは、生物学的にはそうっていうか、父親はそもそもそこにハンディキャップを抱えているというのは、知らなかった。
同様に、父方の祖父母よりも母方の祖父母のほうが孫に対して利他的に振る舞いやすいらしい。自分の祖父母を思うに、確かにそのように思えて、N=1実例ではあるが、そんな理由なの?と思って驚く。