IGN Japan 今井さんのbandcamp評
https://open.spotify.com/episode/6jdWEay65AENWaJM8DudfT?si=bc269ee351684c2b
(今井) じゃあ、一周したのでもう一回私に戻りましょうか。今回、ゲーマーにおすすめする〇〇ですが、私、ゲーム以外の趣味としては音楽がかなり好きな方なんですが、音楽は(オススメするには)ジャンルが幅広すぎて特定のものをオススメするってのは難しいんで、これは前からも言ってるかもしれないけどサービスとしてのBandcampの魅力について。Bandcampはご存知の方もいるかもしれませんが音楽配信プラットフォームでして、実は一番近いのがSteamだと思うんですよ。音楽版のSteamだと思ってくださいっていうのがあって。ていうのは今音楽のサービスってもうほとんどサブスクリプションになっちゃうじゃないですか。映画もそうだけど、まあ時代はサブスクですよ。ゲームパスも出てきて、ゲームもサブスクなんですけど、サブスク時代に見直してもらいたい、一つのコンテンツを買うという体験。これね、一見、単にお金無駄にしてるだけじゃんってところはあるっちゃあるんだけど、ただね、サブスクになると何がつまんないかって言うと、この音源を買うか買わないかっていう選択がないんですよ。つまりSpotifyで好きなアーティストとか見つけてもお気に入りとか自分のライブラリに突っ込むだけで、言ってしまえば所有した感覚にならないと。当たり前だけど。Bandcampは一貫して、個別のトラックとかアルバムを販売するっていうことにすごい意識を向けたサービスでして、なぜそうなのかって言うと、要するに固有のアーティストをサポートできますよっていうことなんですね、まぁ大義名分的に。でも実際それはそうだと思うし、自分がよく聴いている音源の中で、別に無料でも聴けるものも大半ではあるんですけど、これは持ってる、これは自分で買った、買わない、っていうのができてくるのは、 CD とかで音楽聴いていた自分にとっては非常に面白いというか重要な体験なんです。あともう一つ重要なことはユーザーそれぞれのライブラリーも公開されます。だから友達の人の、「こいつ何聴いてるんだろうな」っていうのチェックしたり、「あ、これ買ったんだ」ってチェックしたりできるっていうのはSteamとすごく似てますね。レビューも書けるし、 Amazon レビューみたいな形ではなくてちゃんと買った人だけしか書けなくなってるから…あまり日本人いないから日本語のレビューないですけど…まぁ面白いし、やっぱレビューついてるやつはすごいファン多いんだなとか思ったり。そういった意味で全体としてのプラットフォームの魅力があるんですけど、もう一つ言うとゲームのサントラがいっぱいあります。 (山田) なるほど。サントラ単位で色々あるってことですね?
(今井) そうですね。特にインディーゲームはすごく豊富で、大抵のインディーゲームはもはやBandcampの音源上げてるのがほとんどですし、面白いのは、Bandcampっていうのは元々はアメリカのインディロックとかインディペンデントな音楽を普及させるために始まったサービスなんで、 Bandcamp のプラットフォーム側の趣味っていうのはインディーロックとか、あとはまぁクラブとかジャズとかもかなりあるんですけど、まあいわゆる音楽好きのジャンルなんですよ。そっちはそっちですごくディープで、音楽好きな人だったらすごい面白いプラットフォームで新しい音源探すには楽しいんですけど。なぜか、っていうかまぁ都合が良かったからなんですけど、インディーゲームが流行る時代とともにスタートしてるので、手っ取り早くサントラを公開できるサービスとしてBandcampが選ばれてきて。これまでのBandcampの総合売り上げランキングみたいなやつに何度もインディーゲームが食い込むことが珍しくなくて。なので例えば、普通にベストセラーって言ってもいい、サントラで言うと Minecraft のサントラとかも。これもかなり初期から何度もランキングに入ってきてますね。あれ、実際にアンビエントミュージックとして相当良いアルバムですけど、C418っていう方がやってたと思うんですけどね。あと人気がある人だと、VA-11 Hall-Aもやっぱ凄い人気でしたね。 (各務) 良いですよねー
(今井) VA-11 Hall-Aに関してはオリジナルサンドラックプラスアレンジ版みたいなものもあったり。そういった形で、ゲーム作ってる人とは別に作曲家の方が自分で音源公開することがほとんどなので。逆に言うと他の作品もすぐそこで知れるっていうことですね、コンポーザー単位で聴けるっていう。あと、もちろん Celeste とか、あとトビーフォックスですね。トビーフォックスは(ゲームも音楽も)自分で作ってるんで。デルタルーン とか Undertale とか。で、これ面白いのは、そのゲームと音楽の世界、いわゆるインディー音楽の世界っていう、その間の作品も結構あって。間が何かって言うと結構説明しづらいんですけど…まぁインターネット系の音楽なんですけど。いわゆるヴェイパーウェイヴとかもかなり、基本的にはいっぱい入ってるし。トビーフォックスとかって Undertale で有名になったゲーム作家なんですけど、元々音楽作ってたんですよ。なんの音楽を作ってたかって言うと、Homestuckっていう Web コミックがありまして。英語版でずーっと、ネットのかなり初期から配信してる、見た目だけ見るとすごい下手くそな絵の漫画なんですけど。Homestuckってのは基本的には、アニメでいうとアドベンチャー・タイムみたいなものって言えばいいのかもしれないけど、アドベンチャーゲームを模した世界観なんですよ。このHomestuckっていうのは実は英語圏のオタクにとっては超重要なコンテンツで、Homestuckのアルバムっていうのがいっぱい出てるんですよ、Web 漫画なんだけど。そのHomestuckのアルバムとかの音楽制作からクリエイターとして始まったのがトビーフォックス何です。 (各務) あー(Homestuckの)キャラクター可愛いですね。
(今井) そう、Homestuck実際可愛くて、日本でも少しファンがいてゲーム化の話があったんだけど、あれなんかKickstarterかなんかで金集めて結局あれ出たのか出てないのか分かんないぐらいなんですけど。いずれにしろ海外のインターネットカルチャーがもろに出てくるプラットホームなので。Bandcamp 見てて、なんかこのアルバム流行ってるなって思ったら向こうのインターネットとかで話題になってるものだったりするのは結構いっぱいある。
(今井) Redditとか。そういうとことか、あとは Web マガジンとかの場合もあるし、あとフリーゲーム。海外で人気あるフリーゲームとか上がってきたりもしますね。
(今井) Soundcloud はあくまでも商品を売るサービスというよりも、自分のトラックをみんなに見せてなんか反応を待つ、みたいな所があって。基本的にはレコード屋さんみたいな雰囲気じゃないですよね。Bandcampっていうのはどちらかというとちょっと古臭いシステムっていうか、アルバムごとに一つのページができてて、ハートマークがあって、場合によってはフィジカルのレコードとか CD もカセットテープも販売してたり、あとはグッズも販売してたりするんですよ。
(山田) なるほど。ちょっとちっちゃいお店じゃないですけど、その人の同人イベントのスペースみたいな...
(今井) 日本で有名な pixiv がやってる booth みたいな感じ。ウェブデザインもすごいシンプルだしまとまってるし、私にとって何よりも重要なことは、アーティストごとにちゃんとまとまってるから、検索したりする時も便利だし。メタ情報もちゃんと書かれてるので。そのアーティストはどこ出身かとか…あとタグ機能は、結構乱用されてるんですけど…勝手なジャンルの名前を作ったり…ゲームの音楽はちゃんとビデオゲームミュージックって書いてあったり。そういった意味では音楽をディグる楽しみはインターネット上では一番ありますね。Spotifyとかは確かに気軽なんだけど、どうしてもね、あのなんか、なんだろう…あんまり検索性が良いとも言えないし、情報がないんですよね。このアーティスト誰だよっていう感じになって…気になった人がいても… (各務) まあ確かに。ちょっとあれですね、ドライですよね。
(今井) ドライだし、Bandcampの場合 Twitter とか他のソーシャルアカウントがまとまって書いてあるんですよ。例えば気になった人…なんかこの音楽、何かゲームっぽいなーって気になって調べてくと実はその人ゲームに関わってたりとかいうことがあるので、極端な話、たまにインディーゲームとかはBandcampから発見するインディーゲームがある。
(山田) 確かに、インディーゲームで印象的な音楽聴いて、この曲を作ってる人って他のゲームにも関わってるのかなって思った時に、結構検索しづらいというか、たどり着きづらいっていうのは本当にいつも感じてることだなと思うので…
(今井)そうですね。で、あとそういった意味でやっぱり最近、ゲーム音楽っていう形のものは音楽としても人気が出てきたんだけど、人気のゲーム音楽作家ってのはインディーのシーンでも結構はっきりしてくるですよね、「またこの人に仕事がいったよ」って感じになる。Va-11 Hall-A をやったGaroadさんも人気コンポーザーで、その後Yuppie Psychoっていうゲームとかのサントラもやってますし。あとは例えば…ジャンルによってソートできるのもいいですね。他には、Celeste のコンポーザーのLena Raineって方ですけど、彼女は大学も音楽関係のとこを出て、かなり若い人ですけど、Celeste以外もいくつかのゲームとかに参加してるのも見えますし、ゲーム以外のアウトプットも結構良くて。 Celeste 以外だと最近はChicoryっていうゲームとかもやってますね。 (今井) はいはいはい、彼はそもそもかなり有名な人で、Kaufmanですね。彼はWayForwardっていう開発会社の、インハウスの、開発会社の中の作曲家なんですけど、ぶっちゃけ向こうのチップチューンの世界ではもう神みたいな存在です。Jake Kaufmanはチップチューンの音源を使いながらクラブミュージックみたいなもの鳴らせる中ではかなり良くて。私は特にマイティー スイッチ フォース! が彼の作品の中では一番好きなことやれてるなと。ただやっぱり職業作曲家みたいなところがあるから、シャンティのときはアラビアンぽい音楽をして、ショベルナイトは結構昔ながらのチップチューンを、かなり抑制された音楽を作ってる感じがしますよね。その辺も全てBandcampにあるので。あとJake Kaufmanに関してはやっぱ凄いファンも多いから、生演奏でJake Kaufmanの(音楽を)収録したものもありますね、要するにオケアレンジみたいなやつ。それも素晴らしかったですね、あれは誰の楽曲でやってたかな…ごめんなさいすぐ出てこないわ。まあなんか結構アレンジとかリマスターとかリミックスとかも(いろいろな人が)作ってるんで、まあバンドキャンプ楽しいっすよ、はい。