【輝くトラペゾヘドロン】
十センチの球形と見たものは、多数の微細な不整形の表面から構成され赤い条線を持つ漆黒の多面体で、極めて特異な結晶の一種とも、鉱物を高度に研磨し彫刻を施した人工物ともいえた。その物体は中央部に巻き付く金属の帯と七本の奇妙な意匠をもつ棒で底から浮かしてあって、支持棒は水平に延び、箱の上部近くで内壁の角の部分に固定されていた。ひとたび露にされると、この石はブレイクをほとんどぎょっとする程に惹き付けた。彼は目を引き離すことができず、見つめているうちに、その輝く表面が透明になり、中に不思議な世界が出現しかけているように思えてきたのだ。彼の心の中に流れ込んできた絵は、巨大な石塔が建ち並ぶ異界の天体、大いなる山脈がたたなづく生命の形跡のない別の天体、曖昧模糊とした暗黒の中に渦動のみが意識と意思の存在を物語る更に遠く離れた幾多の宇宙だった。
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