兩河世界の思ひ出。(Advent Calendar 2021の爲に)
此の文章も、兩河世界の内側と外側を行ったり來たりするので。 兩河世界の主要な三つの actor の内、橘榛名ta haruna.iconによって最初に觀測されたのはユーラル帝國 (yUraru) であった。 アンドロメダ銀河の惑星に本據地を持ち、古い時代の習慣や制度を墨守し乍らも數多の星々を支配する帝國である。
私達の地球人による文明に對立し、私達の地球人による文明の諸價値を搖るがす存在として想定された。 ユーラル帝國の基に成ったモチーフは甚だ多岐に亙り、橘榛名の知ってゐたあらゆる帝國、あらゆる古代文明が考察の材料に成った。
その次に觀測されたのがガルデアであり、此れはユーラル帝國が活躍する宇宙を用意し、また人類の或る種の理想的な在り方、向かふべき未來の像として想定された。 諸モチーフは前の記事を讀んで欲しい。
火星帝國が想定せられたのは前二者に比べると可也晚い。 當初兩河世界内の諸文明に對比されるのは地球と其の國家であって、此れは單に「我々」の像でしかなかった。 此處から太陽系人類が地球を中心とする一派と火星を中心とする一派とが別々の存在として分たれ、特に火星の人々が「火星帝國」と云ふ actor として觀測せられる迄には幾許か時間が掛った。 火星帝國がどの樣な帝國であるかについては、此の兩河世界 project に二人目の研究者が現れた事による無數の創發の積み重ねによって觀測され記述された部分が殆どなのではないか?(誰に質問してゐる?) (最初は火星帝國は火星帝國主義共和國聯邦と呼ばれてゐた。日本に出現した「技術主義」を奉ずる「大日本テクノ黨」の一黨支配が敷かれてゐる事に成ってゐた。テクノ黨萬歲! 此れでは詰まり火星は、ユーラルである事が出來なく成って了ったものの(「共和國」であった時は、皇統は失はれた事に成ってゐたので。傳統の喪失。)、ガルデアに離昇しようとするも其れも出來ずにゐる、單に中途の存在に成って了ふ。兩河世界が單に私の内觀である内は其れにも意味があったらうが、兩河世界が「世界」に成った爲、「世界」に適應する樣により詳細な觀測が行はれ、今の姿に近付いて行った。) 思ふに、兩河世界 project は「開かれた」事によって、單なる私の書き付けだった狀態からすっかり變容し、其自體我々に影響を齎す眞に一種の「世界」である事を始めた。故に、前二者の樣に「私にとっての此れ此れによるもの」とは表し難い物に成った。 兩河世界は、一個の完備にして甘美なる世界であって(駄洒落)、「創作者」は同時に世界の内側にある「研究者」としての像も持ってゐる。 其れとは別個の關係性として、「兩河世界」は我々の「現實世界」の中に置かれた創作物であると同時に、實は既知の現實世界の外周に矛盾無く接續出來る樣に成ってゐる。此れは、「此の世界」を「此の世界」と意圖的に混同するのに資する。此の構造の故に、我々は文字通り「現實を創作する」事に成り、「現實を觀測する」事に成るのである。 私は此の「現實を創作/觀測する」試みに、更に新しい人々を招き入れたく思ってゐる。
兩河世界は未だ思ひ出にはなってゐない。其れは已にあなたの觀測圈外にぐるっと存在してゐる。
(了)