言語哲学
言語にまつわる哲学分野です。言語哲学には少なくとも二つの側面があります。
1. 近代以降の哲学史・思想史・科学史の中で、言語哲学は興味深い位置を占めています。現代では言語哲学者とみなされる人物たちは、なんらかの形で言語に取り組むことにより、哲学・科学上の重要な課題に挑戦してきました。フレーゲ、ラッセル、ウィトゲンシュタイン、ステビング、カルナップといったヨーロッパの哲学者、そして彼女らが影響を与えた、クワイン、デイヴィドソン、クリプキといった北米の哲学者が言語哲学者として有名です。たとえば19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したドイツの数学者・哲学者ゴットロープ・フレーゲは、数とはなにか、数学の知識はどうして正しいのか、といった問いに取り組む中で、人工言語を発明したり、自然言語の働きを調べたりしました。言語哲学を学ぶということは、こうした歴史的に重要な業績を学ぶことにつながります。
2. 言語についての基本的な問いや、言語に関連する哲学的問いなどに取り組むのが言語哲学です。たとえば意味とはなにか、言語はどのように進化したのか、思考と言語の関係性はどのようなものか、社会の中での言語の役割はどのようなものか、などなどです。今われわれが立てる問いに対して具体的な答えを出すことを目指しています。和泉はとくにこちらの方向性の中で活動しています。関心が記述的なもので、問題設定が具体的な場合は、統語論や心理言語学といった言語の諸科学との距離がなくなります。和泉の研究テーマには、固有名の意味論や言語使用の社会的含意が含まれます。