統合失調症ブックガイド
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病気じゃないからほっといて そんな人に治療を受け入れてもらうための新技法LEAP
ザビア・アマダー (著), 八重樫 穂高 (翻訳), 藤井 康男 (翻訳)
2016/5/31
概要
著者は精神科医
著者自身の兄が統合失調症
著者は病識のない患者(統合失調症、双極性障害)を治療に導くための方法論LEAPの考案者
LEAP=傾聴(Listen)、共感(Empathize)、一致(Agree)、協力(Partner)という4つのステップによって患者を説得し治療に導く
病識のない精神疾患患者を説得し治療を受け入れてもらう事例が多数載っている
統合失調症や双極性障害の患者が病識を持てずに通院や薬物治療を拒否する事例が多いのはなぜか、という疑問に関する最新の研究についても記載されている
「病識を持てない」ということも統合失調症・双極性障害の症状のひとつである
これらの患者が病識を持てない原因は前頭葉の機能障害であるという説が有力
前頭葉の機能障害によって、「自己の状態を客観的に認識して自己イメージを更新する認知能力」が損なわれる
この結果、患者は病気によって自分の認知能力が失われていたり生活に支障をきたしているということを把握できない
薬物治療に合わせて認知療法を継続的に受ければ、脳の可塑性(脳の一部の機能が失われても、他の部分が変化して機能を補う性質)によって自己イージを更新する認知能力が復活し、病識を持てるようになる
どちらかというと当事者本人ではなく、患者を説得し治療を受けさせたい家族向けの内容と言える
すぐにでも事態に対処しなければならない人のために、どこから読んでもいいように書かれている
アメリカ合衆国における精神医療体制についても知ることができる
アメリカ合衆国は州にもよるが「精神保健センター」があり、精神保健センターは「精神科危機介入チーム」を有している
精神科危機介入チームは家族や周囲の人からの通報によって現場に駆けつけて、その場で精神保健の専門知識によって病状を評価し、入院するべきかどうかを判定し、患者の同意が得られれば病院まで同行し、患者の同意が得られなければ強制的治療のための法的手続きを行う
薬を飲み忘れてしまったり薬物治療を拒否する患者向けに、持続性注射剤(デポ剤)という筋肉下に薬剤を注射して長期間効果が持続するタイプの薬物治療が効果的であると言及されている
https://gyazo.com/04c9c29f74043f7bb475186d88d5eb28
ケースファイルで知る 統合失調症という事実
林公一 (著), 村松太郎 (監修)
2013/1/31
概要
著者は「 Dr林のこころと脳の相談室」で有名な林先生
ここにこの本の紹介ページがある
統合失調症患者が
適切に治療をした場合の事例
治療をしなかった場合の事例
治療をしたが治ったと思って治療を中断して再発してしまった場合の事例
などの臨床事例が多数載っている
とにかく統合失調症は治療をしないと大変なことになるということがよくわかる一冊
なるべく早期に治療に繋げることによって重症化を防げるということがわかる
統合失調症は一時的な風邪などの疾患と違って、治ったからと言って薬を飲むのをやめてはいけない病気である
統合失調症は進行性の慢性疾患だと考えるべきである
糖尿病などと似ている。一生薬を飲み続けないとどんどん悪化する
統合失調症当事者にとっては薬物治療の継続の重要性を理解できるような内容の本と言える
統合失調症患者を抱える家族にとっても、統合失調症を早期に発見して早期に薬物治療を開始することの重要性を理解できるような内容の本と言える
理解のある家族によって薬物治療をサポートしてもらって穏やかに過ごせている事例
理解のない家族によって薬を飲み続けるのは体に良くないなどと言われて薬物治療を中断してメチャクチャになってしまう事例
などが載っている
薬を飲み忘れてしまったり薬物治療を拒否する患者向けに、持続性注射剤(デポ剤)という筋肉下に薬剤を注射して長期間効果が持続するタイプの薬物治療が効果的であると言及されている
https://gyazo.com/b9cdaa48ea9feb00570f12c9f9a0f669
精神疾患の脳科学講義
功刀 浩 (著)
2012/7/10
概要
著者は精神科医であり、精神神経科学の専門家
「臨床心理家のための脳科学講義」として『臨床心理学』誌に連載されていたものをまとめた本
臨床心理家へ向けた内容のため、医学や脳科学の専門家でなくても読めるようになっている
前半6回が統合失調症、後半6回はその他うつ病やその他の精神疾患についての内容である
統合失調症に関する膨大な統計調査結果や研究論文がわかりやすく紹介されている
統合失調症は単なる精神障害ではなく認知機能障害であることが述べられている
統合失調症の発症によって、脳にどのような器質的変化が生じていると考えられるかを詳細に解説している
統合失調症の原因についても調査研究の結果が解説されていて、以下の3つの複合的原因ではないかと述べられている
遺伝的要因
統合失調症になりうる遺伝子を親から受け継いでいること
両親いずれかが統合失調症の場合、子が統合失調症を発症する確率は50%
発達的要因
胎児期の発育不良によって脳が充分に発達していないこと
低出生体重
低酸素性虚血性脳症
ADHDやASDなどの発達障害と同じような原因
環境的要因
少年期から青年期にかけての甚大なストレスを受けること
統合失調症における脳内物質の状態や抗精神病薬の作用機序についての研究が紹介されている
かなり専門的で高度な内容になっている
科学書を読むのに慣れていないと若干つらいと思う
脳科学・神経科学・認知科学への強い興味がある人にはオススメできる
統合失調症当事者にとっては、
自分自身の脳がどのように変化しているのかを理解できる内容と言える
自分が飲んでいる薬が脳内でどのように作用しているのかを理解できる内容と言える
子どもがほしい場合、予防や早期発見のためにどのような点に気をつければいいのかを理解できる内容と言える
https://gyazo.com/df731df2a0828cbe5c828ffaa069b080
ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記
小林 和彦 (著)
2011/10/28
概要
著者は統合失調症の当事者
統合失調症の当事者による自伝・回顧録的な内容の本
統合失調症の当事者が妄想や幻覚や幻聴の内容を正確に覚えていることは非常に貴重
まだ読んでる最中なのであとで書く
https://gyazo.com/6327625c13435d03fa6a302adfc64371
統合失調症 その新たなる真実
岡田 尊司 (著)
2010/10/15
概要
著者は精神科医
統合失調症の概要がざっとわかる
統合失調症のいろいろなパターン
統合失調症患者の扱いの歴史的変遷
統合失調症という病気がどうやって発見されたのか
近代史や社会科学に興味のある人にオススメできる
図版も豊富でわかりやすい
統合失調症当事者にとっては、自分の病気がどのようなものであるのかを手軽にざっと知ることができる内容と言える
まだ読んでる最中なのであとで書く
https://gyazo.com/c2432688d6181d419f7b1c06c2ac0228
救急精神病棟
野村 進 (著)
2003/10/2
概要
著者はジャーナリスト・ルポライター
取材期間は2000年末から2003年
かなり古い内容だが当時の精神医療の現実を知ることができて興味深い
当時の日本の精神科病院は重症化した患者を長期入院させて経営を成り立たせていた
いまでも精神科病床は多い
千葉にある、日本で初めて作られた精神科に特化した救急センターが舞台
精神病の急性期に3ヶ月間だけ入院治療をする場所
早期に治療介入してなるべく早く社会に復帰させることを目指している
精神科に初めてやってきた若い研修医を主人公にした体で書かれている
多数の統合失調症の急性期の事例が詳しく紹介されている
精神科における入院の様子がどんな感じなのか知りたい人にオススメできる
過去の日本の精神医療について知りたい人にオススメできる