カオスビルディング
カオスビルディングは、プロダクトマネジメントの新しいアプローチであり、明確なビジョンを持たず、利用可能なリソースで実装可能であれば、無駄な機能を含めて圧倒的に高速に大量に開発し、必要に応じて同じスピードで撤回することを特徴とする。このアプローチは、予測不可能性と創造性を最大限に活用し、新しい価値を生み出そうと高速に試行錯誤をし、顧客へデリバリーすることを目指す。 カオスビルディングの中心にあるのは、超高速開発と創造的破壊の理念である。無駄な機能も恐れずに追加し、それが革新の種となることを期待する。実装できそうな機能を思いついたら即座に開発してリリースし、不要そうなら即座に撤回することにより、絶え間なく新しいアイデアを試し続ける。これにより、常にユーザーの期待を超える革新を提供できる。また、リアルタイムでフィードバックを収集し、迅速に改良することで、プロダクトの進化を加速させる。 そもそも、ビルドトラップの考え方とは真逆に、カオスビルディングは、ユーザーのニーズや市場動向は予測も観測も検証も不可能あるいは困難であるという前提に立つ。だからこそ、誰のための何の役に立つのかわからない機能であっても、とにかく高速に大量に開発し、デリバリーし、ユーザーフィードバックを収集することで、初めて、ユーザーのニーズや市場動向を観測し、理解することができると考える。 一部の意見では、ビルドトラップに陥らないためには、プロダクトマネージャーが明確なビジョンを持って独裁することが重要だとされている。しかし、このような独裁的アプローチこそがプロダクトの革新を阻害し、プロダクトを停滞させる原因となり得る。現代の市場は超高速に変化していて、予測不可能であり、ユーザーのニーズは常に変動する。固定されたビジョンや独裁的なリーダーシップは、ダイナミックな環境に適応する柔軟性を奪う。 カオスビルディングは、この問題を解決するためのアプローチである。明確なビジョンを持たず、ただ開発そのものを楽しむことを重視する。無駄な機能も恐れずに追加し、それが革新の種となることを期待する。周辺の意見に囚われず、思いついたら即座に開発し、不要そうなら即座に撤回する。この高速な実験と撤回のサイクルこそが、真のユーザー価値を発見する鍵である。 カオスビルディングでは、独裁的なビジョンに頼るのではなく、チーム全体が自由に自律的に発想し、実験し、失敗から学ぶことで、プロダクトは進化し続けることができる。カオスの中から新しいアイデアが生まれ、プロダクトを市場で際立たせる。 カオスビルディングのメリットは、プロダクトの革新の促進と迅速な市場対応、あるいは市場創造にある。既存の枠にとらわれず常に新しい価値を生み出し、市場の変化やユーザーフィードバックに迅速に対応することができる。ただし、デメリットとしては、無秩序な開発プロセスが混乱を招く可能性があることと、無駄な機能の追加と撤回に多くのリソースが必要であることが挙げられる。しかし、これらのデメリットは、カオスビルディングのアプローチを通じて新たな発見や価値創造に繋がるため、最終的にはプラスに転じることが期待できる。 カオスビルディングは、ビルドトラップのデメリットを逆手に取っている点で優れている。ビルドトラップでは、機能追加が自己目的化し、リソースの無駄遣いやプロダクトの複雑化が問題となる。しかし、カオスビルディングでは、無駄な機能の追加自体を高速に行うことを自己目的化することで、迅速な実験と撤回が可能となり、プロダクトの進化を加速させる。 このカオスビルディングアプローチにより、ユーザーのニーズや市場の変化などを把握する必要すらなく、高速に絶え間なく進化するプロダクトを実現することができる。