インターネットは社会を分断するのか
2018/10/11
創成期の期待
時間・空間を超えた大規模な情報交換
対話と理解が進む→民主主義にとって良いこと(ハーバーマス「公共圏」) 現実
対話・理解ではなく誹謗・中傷
理解する努力の放棄
https://gyazo.com/ffc4e59272147b5e7a915570314f2605
政治傾向が保守・リベラルどちらかに偏り、中庸が減ること
個人レベルでは政治的意見が明確化するという点で積極的に評価もできる
社会としては行き過ぎた分極化は民主主義にとってはマイナスとされている
討論による政策の改善が行われない等
Pew Research Center 2014a
20年にわたって全く同じ質問表でアンケート調査を行っている
過去10年の間にアメリカ国民の分極化が進んだ様子がわかる トランプが登場した背景?
Amerian National Election Study 2015c
Gentzkow, Shapiro and Taddy 2016
政治家の演説をAIによってRepublicanかDemocratか分類する
近年になるほど分類に必要な文章の長さが短くなっている
実証研究はない
10年以上に渡るアンケート調査のデータがない
でも日本でも分極化の兆しがあるんじゃねとのことです
2018/10/8 日経新聞「分断された米国の苦悩」
しかし、分極化は本当にネットのせいで起きたのか?
新聞・メディアでは反対意見にも触れる
ネットでは自分で情報源を選択可能
自分の意見に近い人(like-minded people)
自分の意見を支持する情報ばかりに接していると自分の意見が強まる
ネット上の政治サイトのハイパーリンクネットワーク分析
RepublicanとDemocratはほとんど相互リンクしてない
実証研究
肯定側
Pew Resarch Center 2014b
Nie 2010
Fox Newsの視聴者のなかのネット利用者はさらに保守的である
否定側
Boxell et al 2017
分極化したのはネットに親しんだ若年層ではなく中高年 Barbera 2015
マイボイス社による日本での調査
2017/08
調査内容
政策争点10個を尋ねる
ネットの利用習慣を尋ねる
結果
ニュースとワイドショーの視聴頻度と分極化は負の相関 因果はどちらか?
ネット原因説と矛盾しているデータ
年齢効果
しかし、実際には逆である
年齢効果のさらなる検証
ある政党を強く支持する人はその政党の掲げる政策を一貫して支持するはずだ
結果
若年層は与党支持者でも野党的政策に賛成することもある
マイボイス社 第二回調査
2018/02 半年後
前回とおなじ調査対象に全く同じ質問表で調査
時間経過による影響の調査
ネット利用頻度の時間経過による変化
非利用者:もともと使ってなくて半年たっても使ってない人
利用停止者:もともと使ってたけど半年たって使うのやめた人
利用開始者:もともと使ってなくて半年たって使いはじめた人
利用継続者:もともと使っていて半年たっても使っている人
がわかる
非利用者 対 利用開始者
非利用者 対 利用継続者
ネット利用頻度が増えても分極化傾向が出ていないことがわかった だいたい保守とリベラル半々くらいになるように選ぶ
https://gyazo.com/c4796e4fe64b7af71c78bc332f648b5f
クロス接触率:フォロー相手の中で自分と反対の政治傾向の人の割合を調べてみた
保守の人が接している論客のうち32%が反対陣営の論客である
リベラルの人が接している論客のうち47%が反対陣営の論客である
Barbera 2015
リアルとの比較が必要では?
むしろリアルのほうが情報の選択的接触は起こりうるのでは…? そうすると、逆の仮設もありうるのでは…?
逆の仮設:ネットでは選択的接触が少ない。自分と反対の意見にも接する。ゆえに若年層では分極化が進んでいない。 論点整理
仮にネットが分極化を進めていないとしたら、何が分極化を進めているのか? パネル調査ではネット利用するほど穏健になるのに、なんでネットはこんなに荒れているんだ?
ジャーナリスト
テーマというかライフワーク
ITの普及進化
インターネットに対する言説は20世紀的なステレオタイプにあふれている
インターネットで若者が馬鹿になって安倍政権を支持するみたいなやつ
田中さんの研究はそれを否定するようなものなので興味深い
年齢効果について
時代による変化を考慮してもいいのではないか
時代によってメディアリテラシーが変わる
高齢者:メディアはそこそこちゃんとしてて信用できると思い込んでいる?
若年層:嘘を嘘と見抜けない人は以下略みたいなことを言い聞かされて育っている?
近代における外食
黎明期では隣で赤の他人が食事しているのが奇異なことでみんなジロジロ見たりしていた
いまではみんな慣れてなんでもないことになった
いまのインターネット
赤の他人のはずの何かに異常に怒り続けている道端のヤバそうな人にいちいちみんなで罵倒しまくるような状況
そのうち慣れるのでは?
共通する変化
黎明期はまともなユーザーが多かった
普及期になるとへんな人が増えていってまともなユーザーが離れていく
読解力、物事を読み取る能力
党派の問題ではなくてなんも意味わからんままワーッってなってる人が結構いるのでは?
リテラシーだとか読解力の問題だとすると、短期的に乗り越えることは容易ではなさそう…
しかし長期的には世代交代でほっといても改善しそう
いかに短期的に民主主義を再復興させるかというあたりが問題になってくる
ブロガー、マーケティングコンサルタント
世代の話は納得感がある
マスメディアに慣れている世代
自分の中での正義感が選択しているマスメディアと連動してきた世代 インターネットでぜんぜん違う正義感の人と出会うと、絶対意見を変えてやるとハッスルしてしまう 若年層は良い意味でも悪い意味でも他人の意見を変えることなんてもう半ば諦めてる
ターゲットにしている穏健で普通な層とは違う極端な意見を持った層にリーチすると正義感でハッスルしてしまう
インターネット以前ではありえなかったような極論のクレーム及び影響力が発生するのが炎上
自覚的に炎上を起こしてやろうと思っている人が少ないという話なのではないか 無自覚的に、素朴に自分は正しいと思って意見を発信している人は「炎上に加担してます」とは答えなさそう たまにこの調査結果を知って炎上を開き直っている人がいるけど反省すべきところはちゃんと反省しろと言いたい 自然発生だったのか意図的なマーケティングだったのか
Facebook Adsで分極化を促そうとしていた疑惑で廃業
計量経済学、コンテンツ産業、ソーシャルメディア研究
著書:「ネット炎上の研究」 「炎上と口コミの研究」 大阪大学 辻大介
ネットで政策意見は穏健になるけど敵味方感情は助長するのではないか説
ネットに誹謗中傷が溢れているように見えるのはなぜなんだ
世論調査:聞かれたから答えるという受動的な発言
ネットの発言:言いたいことがあるから言うという能動的な発言
そもそもサンプルが偏ってるから分極化しているように見える? 田中辰雄氏によるまとめ
リテラシーの問題ではなくインターネットの設計の問題がある
文盲、極論が跋扈する
サロン型のSNSを提案
質疑応答
見知った人同士のグループがテーマを決めて使い始める
テーマを決めて使い始めた場合、継続利用することが少ない
LINEを使い続ける人々は穏健というデータになっていく 反対意見もフォローしてるっていうけど、攻撃対象を探すために見ているのでは?
あると思います
それでも反対意見を聞いているということは重要
荒れないインターネットは本当に設計できるのか?
招待制の地域SNSは招待者が自分の招待した人の言動に責任を持つみたいな空気で荒れにくい
見ることは誰でもできるけど、書き込みは招待者のみができる、みたいなメディアとかどうだろう
新潮45はもともと殺人事件のハードなジャーナリズムを通じて社会の世相を浮き彫りにしようという雑誌だった
パッケージ課金型メディアから記事課金型メディアになって凋落した
マーケティングってそもそも思考誘導だよね
データ・ドリブン・マーケティングのダークサイド
アンケート調査で税金払いたくないですか?って聞いたらみんな払いたくないって答えるのでは
個人の願望や好き嫌いと社会全体として望ましいことは対立しうる