アジト蘇生
https://youtu.be/d9wcjePi1Lc?si=sV3dr7-KVa7bO2sk
建築が生きているとはどのような状態か。これは、建築の強制復活のための儀式である。
物置になっていた土蔵、通称「アジト」を蘇生させるパフォーマンスを行った。
空間の中に、循環を前提とした構造体としての「心臓」を構築する。これは物理的な装置だけでなく、演者と観客の相互応答、情報のフィードバック、空間の変容をすべて含む複合的な系である。
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1.演者は相互応答性の高いor独立して動き続けるパフォーマンスを行う。
-心拍センサーを装着し、踊る(前川友萌香)
-心拍を取得し、会場に心臓音を響かせる(鳴瀧)
-照明を心拍に合わせて制御し、明滅させる(Nagasena)
-俳句を詠み、発声する(岩田奎)
-人形に心臓マッサージをする(芳賀菜々花)
-キーボードと鍵盤ハーモニカの演奏をする(Hyozo)
-ノイズや環境音をコンピュータで生成する(鳴瀧)
-俳句を印刷し、アジトの壁に貼る(Nagasena)
-身体の動きをセンシングし、映像化する(日聖翼)
-写真、動画撮影をする(廣瀬十創・髙橋遥・Shen Jun Han)
2.観客は演者に水を飲ませ、身体を冷却する。
3.これを4時間連続して行う。
https://gyazo.com/2f8202438156cb7d578d24f12b166485
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序盤、1時間ほどですでに前川の意識が朦朧としている。岩田はその様子を真正面に捉えながら俳句を作り続けている。Googleスプレッドシートに記入されたそれは手作業で印刷され、観客の後ろやドアの前にも貼り付けられ、壁が満たされていく。Hyozoはそれを見て音楽を変容させていく。前川の心臓はセンサーと赤外線カメラによって位置と鼓動が特定されている。会場は多数の視線にさらされ、また多数の扇風機と氷によって冷やされている。
それぞれのアクションは別のアクションを発起し、重みをつける。進行する身体・音・光の連続する関数に対して、写真や俳句はその一瞬の空間の傾きを宣言する導関数のように単位や方向といった意味を与え、それらが再帰し未だ無計画に続く時間芸術の道標になる。
この循環構造はアジトが人間を媒介物としている。人間が運ぶ通時的な営みと共時的な場を取り込む/吐き出すこと。この継続によって、人間に「生きられた建築」は現在進行形で「生きている建築」と同一化する。これは建築に能動的な意志を読み取る方法と言ってもよい。
今、荒療治によってアジトは仮死状態から復活した。まだ身体は不完全である。ただ、我々の前に現れたものは、比喩ではなく「アジトの心臓」であった。
詠んだ俳句
https://gyazo.com/e05ad360f372be82af9f0911f8038509
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開始前の告知からいくつかの要素が増え、仮説的に提示した文章にいくつか補強、訂正の余地が生まれたため、パフォーマンス以後からみた全貌を以上に記録した。
Statement
空き家は、「寝ている」だけなのか。それとも、すでに「死んでいる」と言うべきなのか。そもそも、生きている建物とは何を指すのだろうか。
建物が生きているとは、内部で人間が絶えず動き、建物と人間とが相互に影響を及ぼし合うことを意味する。建具や照明は、まるで人が汗をかいたり、暗闇に目を慣らすかのように、そこにいる人の状態に応じて様相を変える。そうして人間の生を投影し、建物はそれに応答しているのだ。
また、建物には朝と夜、夏と冬といった、循環する時間に対する応答が必要だ。開放と閉鎖、オンとオフ、衣替え──一時的ではなく周期的に人が定着し、再び去るその往還こそが、建物を「生き物」たらしめる。逆に、人の営みが途絶えた空き家は生の循環を失い、仮死状態に陥っている。
神戸の山裾に広がる梅村には、かつて土蔵として使われ、村人から「アジト」と呼ばれてきた空間がある。防音性を活かした音楽イベントで賑わった時期もあったが、現在は長らく人の気配が絶え、まさに仮死のまま静かに息を潜めている。
そこで私たちは、この土蔵を「荒療治」で蘇生させる。まず内部に「心臓」をつくり出す──動脈から静脈へ、静脈から再び動脈へと、拍動に合わせて媒質を送り渡す循環システムを構築する。外部からの刺激には瞬時に応答し、一度駆動を始めれば、そこには止まることのない自律的な鼓動が生まれるだろう。
パフォーマンスは次のように展開する。前川による全身を使った激しい身体運動をトリガーに、岩田が即興で俳句を早読みする。俳句は、次の動きを生み出すための「舞踏譜」として機能し、その度にアジトの心臓は新たな命を受け取る。また、前川の心臓音はリアルタイムで取得され、爆音で空間に放出され続ける。さらに会場にはキーが設定され、観客が特定の動きを行うことで前川の次の振る舞いが指示できる仕組みだ。建具の開閉や照明の瞬きも、すべてが一つの循環に取り込まれ、人間もまたその不確かな鼓動に身を委ねる。
やがて土蔵──〈アジト〉──は、巨大な「生」として立ち上がる。人間と建物と観客が一体となり、新たな循環のネットワークがここに誕生する。
最初に入ったとき、アジトは何も語らなかった。
声も、反応もなく、ただ温度と匂いと暗さがそこにあった。
湿気を吸い込む。長く閉ざされていた時間が、まだここに滞留している。
それでも、わたしたちはここに踏み入れた。空間の奥に沈んでいた「気配」に呼ばれるように。
#CV #HEART_Beat_Session #Genius_Loci