鉄道忌避伝説の謎
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p2 半世紀にわたって日本各地の鉄道発達の実態の調査研究をしてきた。各地の地域社会はかなり早い時期から鉄道の有効性を認識し、導入に積極的に努力してきた。宿場が寂れるとか、沿線の桑が枯れるといった理由の鉄道反対運動は全くといっていいほど確認できなかった
p1 鉄道忌避伝説。信頼できる文書史料がなく、古老の昔話として伝えられている。
p5 鉄道から離れた位置にある地方都市を中心に鉄道忌避伝説が住民に信じられているが、その事実を示す史料を提示した文献はなく、基本史料で鉄道忌避の実態を分析した研究論文も1980年代まで現れなかった。
p39 史料がないことは、あるよりもむしろ厄介で、お前の探し方が悪いのだと言われればそれまで。史料がないだけで鉄道忌避伝説を否定することはできない。鉄道や駅を誘致する文書は数多く発見されているが、鉄道反対をはっきりうたった文書は見つからない
p42 武蔵野台地上の境や立川が積極的に駅の設置を誘致していた事実はあるが、甲州街道沿いの府中や調布が鉄道の通過そのものに反対していたとすれば、それは余程の特別な事情があり、史料が残っているはず
p44 歴史学者や地理学者は鉄道土木の常識に無知で、単に都市と駅の位置の違いだけで鉄道忌避伝説と断定してきた憾みがある
p58 東海道線が蒲郡経由なのは勾配を10‰に抑えられるから。当時は地形図も完備されてなく、土木技術者が踏査するしかないので、蒲郡からのタレコミは有効だった。岡崎駅の設置場所は矢作川をなるべく楽に越えられるように決まった
p62 他に三島、藤枝などの鉄道忌避伝説が知られている。逆に鉄道のルートや駅の誘致運動が盛んだった
p208 よく調べもせずに、萩と甲州街道の鉄道忌避伝説を事実として書いてしまう人がいる