ティチーング、メンタリング、コーチングは異なるもの
ティチーング、メンタリング、コーチングは異なるもの
ティチーングは相手がその事柄に対して知識を持っていない(時には誤った知識を持っていることもある)など"知らない"場合に、教育的アプローチを通じて具体的な知識や技能を伝えるという形が多い。
知識なので、ある程度、それに対するリファレンスやエビデンスがあるものやコモンセンスが対象になる。
それ以外だとある文脈の中にある知識も教える対象になる。たとえば「ScrumGuideにあるスクラムにおけるデイリースクラムの時間は15分である」といったもの
メンタリングは相手がその事柄についてなんらかの知識や考えを持っている状態で、会話や対話という形で行われることが多い。相手の理解の度合いは様々だが、メンターは(多くの場合)相手よりもその事柄に対して知識、理解が深い状態であることが多い。
そして、会話や対話によってメンターの考えや理解、相手の知識、理解といったもの重ねたり、結合したりして、相手の知識や考えをアップデートしたり、時には2人で新しい知識や考えを見つけることを通じて、メンティの成長をサポートするといったもの
コーチングは相手の中に何らかの答えがある。もしくは、相手はその答えを自分自身で導き出すことができると信じるという前提に立つ。具体的な答えを提示するのではなく、質問や(鏡としての)フィードバックを用いてクライアント自身が解決策や答えを見つけるよう導く。
ティチーングやメンタリングはその事柄に対して適切な知識や経験、考えを持っていることが前提になることが多いが、コーチングは必ずしもその限りではない(時には知識や経験が邪魔になることもある)
アジャイルコーチはこの3つを使い分ける
アジャイルコーチは"コーチ"という名前がついているので誤解されることもあるが、ティチーング、メンタリング、コーチングを使い分ける。
たとえば、スクラムに取り組み始めたスクラムチームに対しては、ScrumGuideを中心にスクラムの基本的な知識をティチーングする。
また、ある程度、スプリントを経験したチームが新しいふりかえりのやり方を探している場合に、メンタリングの形で複数の選択肢や考え方を提示したり、ふりかえりの価値を対話を通じてチームのそれがアップデートすることを期待するかもしれない。
チームが十分に経験を積んでいる場合、「みんなにとっての良いスクラムチームとはどういうのもの?」といったようなコーチングによる問いかけを中心にして、チームメンバーがお互い対話していくことで自分たちでこの問いの答えを見つけていくことに関わる。
これら3つは度合いでありキレイに使い分けられるものではない。またある時にコーチングが多くなったとしても、チームが持っていない知識が必要になった時には(アジャイルコーチがその知識を持っていれば)ティチーングすることもある。つまり、この3つは線形に進むわけでもないし、どれが優れている、劣っているというわけではない。