自分で決めないことは、他者に負担を押しつけているとも言える
決めないことには、背景がある
会議や何かを決める場で、時々こういう反応を見ることがあります。
「自分は意見ないです」
「どちらでもいいです」
「決めてもらったらいいです」
もちろん、そう言いたくなる背景はいろいろあります。
情報が足りない
自分に決める権限がない、あるいはないと思っている
その場で意見を言いにくい関係性になっている
本当にどちらでもよい
「どちらでもいい」と言うこと自体が、いつも悪いわけではありません。
ただ、何かを決める場で、いつも自分では決めずに、誰かに決めてもらおうとすることには副作用があると思っています。
決めることには、負担がある
何かを選ぶということは、何かを選ばないということでもあります。なぜそれを選んだのかを説明する必要が出ることもあります。選んだ結果がうまくいかなかった時に、ふりかえる必要もあります。場合によっては、結果に対する責任を引き受けることもあります。
「決める」とは、単に選択肢を選ぶことではなく、その選択に伴う説明や結果をある程度引き受けることでもあります。
そう考えると、自分で決めないということは、その負担を他の誰かに渡しているとも言えます。
「自分はどちらでもいいので、決めてください」というのは、一見すると相手を尊重しているようにも見えますが見方を変えると、決める負担や説明する負担を相手に預けているとも言えます。
これは、本人にとっても、周りにとっても、あまり良い結果を生まないと思っています。
決めないままだと、決める力は育ちにくい
まず、決める力が育ちにくくなります。
決めることは、ある種の筋力のようなもので、最初からうまく決められるわけではありません。良い判断ができるようになるには、経験が必要です。
決めてみて、結果を見て、うまくいかなかった理由を考え、次はどうするかを考えるといった実践を繰り返すこと、少しずつうまく判断ができるようになっていきます。
決めることを避け続けていると、その練習の機会が減り、決める筋力も育ちにくくなります。
そして、周りからの見え方にも影響します。
「あの人は、自分では決めない人だ」
「あの人は、言われたことをやる人だ」
「あの人は、自分の考えを出してこない人だ」
本人はそんなつもりではなくても、そう見られてしまうことがあります。
仕事の中では、自分がどう思っているか、何を良いと考えているか、どちらに進みたいと思っているかが見えないと、周りもその人を頼りにしづらくなります。
一方で、決めることを引き受けている人は少しずつ決めることに慣れていきます。判断の材料を集めることにも、決めた後に説明することにも、うまくいかなかった時に、次へつなげることにも慣れていきます。
その結果、仕事を任されやすくなったり、評価されやすくなることもあると思います。
これは、能力の差というより、経験の差でもあります。
決めないことは、関係性にも影響する
一緒に仕事をするというのは、単に誰かの指示通りに動くことではありません。
それぞれの専門性や経験や関心から「自分はこう思う」「こちらの方がよいと思う」「今回はこう進めたい」と出し合うことでもあります。
それがあるから、仲間として仕事ができるのだと思います。
片方がいつも決めて、もう一方がいつも従うだけになると、そこには対等な関係性が生まれにくくなります。もちろん役割や権限の違いはあるし、最終的な決定者が決まっていることもあります。でも、最終決定者ではなくても、「自分はこう考える」と表明することはできます。
「自分ならこちらを選びます」
「今の情報だと、こちらの方がよさそうに見えます」
「少し迷っていますが、私はこうしたいです」
「決めきれないですが、気になっているのはここです」
このような言い方でもいいと思います。
大事なのは、必ず正解を出すことではありませんし、いつも強い意見を持つことでもありません。 自分なりに考えて、今の時点での判断を出してみることです。
もちろん、間違うこともありますし、後から考えると、別の選択の方がよかったと思うこともあります。 それも含めて練習です。
本人だけに求めても、うまくいかないことがある
一方で、これは本人だけに求めればよいものでもありません。
「自分はこう思う」と言った時に、すぐに否定される。間違ったことを言うと責められる。意見を出しても、結局いつも一部の人だけで決めてしまう。
そういう場では、人は自分の考えを出しにくくなります。
なので、マネージャーや場をつくる人たちには、「正解を出してもらう」のではなく、「今の時点での考えを出してもらう」働きかけが必要になります。「どちらでもいいです」と言われた時に、すぐに引き取って決めるのではなく、「今の情報だと、どちらがよさそうに見えますか?」と問い直してみる。それだけでも、決める練習の場になります。
まずは小さく、自分の考えを出してみる
まずは、会議の中で「どちらでもいいです」と言いそうになった時に、少しだけ踏みとどまって、自分に問いかけてみる。
「今の自分は、どちらがよいと思っているのか」
「その理由は何か」「何がわかれば、もう少し決めやすくなるのか」
「自分が気になっていることは何か」
その上で、完璧でなくてもいいので、自分の考えを出してみる。
「私は、今のところこちらがよいと思っています」
「理由はこうです」
「ただ、この点は少し不安です」
それくらいからでいいと思います。
自分で決めないことは、自分を守っているように見えるかもしれません。でも、長い目で見ると、自分の決める力を育てる機会を失っているのかもしれません。そして、その分の負担を、誰かに渡しているのかもしれません。
「自分は、少なくとも今はこうした方がいいと思う」
その一言から、決める練習は始まります。
#ポエム #考え方