スプリントの中止
スプリントゴールがもはや役に立たなくなった場合、スプリントは中止されることになるだろう。プロダクトオーナーだけがスプリントを中止する権限を持つ。
2020年版のScrumGuideには上記のように記載されています。
ここではどんな場合にスプリントの中止が起きるのか?とスプリントの中止が起きた際にどのような活動をすると良いのか?を書いてみます。 スプリントが中止される理由
いくつかの事例を書いてみます。
1:競合が先にそれを実現した
スプリントゴールに「ある体験ができる機能を競合より先に市場に出すこと」が大切な内容として含まれていました。しかし、スプリント途中で競合が先にその機能をリリースしたことが判明し、そのスプリントゴールの価値の大半が失われたため、スプリントを中止しました。 2:連動した広告キャンペーンの開始時期が変わった
スプリントゴールに「特定の広告キャンペーン開始に合わせた顧客体験を提供すること」が含まれていました。そのためチームはキャンペーン開始に合わせた機能に取り組んでいましたが、契約条件など諸事情により(少なくとも)そのスプリントのすぐ後に広告キャンペーンが開始されることはなくなりました(いわゆる延期)。このため、スプリントゴールを到達地点としたスプリントとしては意味がなくなったのでスプリントを中止しました。
3:技術的に実現不可能性であることがわかった
スプリントゴールを実現するためにあるサービスと連携することが必要だったのですが、それが想定通りに動かないことがわかりました。代替案も検討しましたが、それでは当初期待するスプリントゴールに到達することができないことがわかり、スプリントの中止を決定しました。
このように、スプリントゴールが役に立たないと分かったとき、スプリントが中止されることがあります。
スプリントが中止した際に行うこと
スプリントの中止を決めた場合に以下のようなことを行うこともあります。
1: ステークホルダーへの説明
スプリントの中止の理由にもよりますが、ステークホルダーが知らないのであれば中止の理由や背景を説明します。こうすることでステークホルダーの驚きも少なくなります。
別のステークホルダーから提供された情報でスプリントを中止することもあります。このような場合でも他のステークホルダーと会話しておくと良いでしょう。
2:チームのケア
スプリントの中止は、チームメンバーがストレスを感じることもあります。「ここまでやったのに無駄になった」と感じたり、その後の急激な変化や計画変更に伴うバタバタした状態に対してストレスを感じることもあるでしょう。
このようなときは、チームの活動をゆっくりにしたり歩みを止めて、会話の時間を取ったり、やったことをふりかえったりします。このような活動によって、自分たちがなにを得たのか?といったことを発見する機会にもなります。
3:次のスプリントの準備
スプリントの中止の次のスプリントをどのように始めるとよいでしょうか。例えば、1週間スプリントの4日目のデイリースクラムでスプリントが中止した場合を考えてみます。残りの2日を(必要であれば)次以降のスプリントの計画づくりやリファインメントをしてもいいでしょう。また、少し疲れいているようならリフレッシュするために使ってもいいでしょうし、本当はやりたかった技術的な課題やちょっとした修正などをこの機会に取り組んでみるのも1つです。
このように、スプリントの開始日(曜日)を変えずにまた次のスプリントをいつも通りに開始することをオススメします。
スプリントの中止の頻度と検討事項
スプリント中止がどれくらいの頻度で発生するかは、プロダクトの状況になどによります。
たとえば、まだプロダクトの形や狙いが定まっていなかったする場合は発生しやすくなるかもしれません。しかし、2,3スプリントごとにスプリントの中止が起きているような場合、スプリントゴールを立てる時に必要な情報が足りていない可能性もあります。これは、チームがステークホルダーなどチームの外から情報をより集める必要性やプロダクトの計画づくりのやり方を見直す合図かもしれません。