「スクラムはミーティングが多い」という声について思うこと
「スクラムはミーティングが多く、作業の時間が取れない」といった声を時々耳にします。たしかに、会議が増えると負担に感じることもありますよね。でも、本当にスクラムイベントは「無駄な時間」なのでしょうか? それぞれに重要な目的があり、適切に機能すれば開発をスムーズに進めるための「投資」となるのです。 ※余談:スクラムが唯一のやり方とは思っていません。利用者に価値のあるプロダクトを素早く提供できているのであればどんなやり方でもいいと思います。
改めて、スクラムガイドに記載されているスクラムのイベントを整理すると、スプリントを除けば、以下の4つのイベントがあります(後ろの時間は、1週間スプリントでの最大時間です)。 1週間あたり約5時間程度がスクラムイベントの時間になります。週40時間稼働だとすると、12%がスクラムイベントに当たります。
では、それぞれのイベントの目的はなんでしょうか?
スプリントプランニング
スプリントプランニングでは、次のスプリントで「なにを目指すのか?」「なにを作るのか?」「どう作るのか?」といったゴールやスコープ、計画、作戦を立てます。スプリントプランニングが効果的に機能していないと、チームでゴールが揃わなかったり、理解がバラバラのまま進んでいき、うまく協働して仕事ができなかったりします。
デイリースクラム
デイリースクラムでは、前日から作業や進捗といった変化をチームで確認し、ゴールにたどり着けそうか、何か問題はないか、お互いに協力できることはないか、もっと効率的な方法はないかを検査し、計画を更新することで適応します。デイリースクラムが効果的に機能していないんと「気がついたらゴールにたどり着けないことがわかったが、時間がもうなかった」「問題を早く発見できずにムダな時間を使った」といったことが起きてしまいます。
スプリントレビュー
スプリントレビューでは、作ったものを実際に必要な人に使ってもらい「使えるか?」「役に立つか?」などの観点でフィードバックをもらい自分たちが作ったものを検査し、「次に何を作るといよいか?」といったアイデアを整理したり、次の計画をアップデートします。スプリントレビューが効果的に機能していないと、作ったものがどうだったか?とわからずにこれから目指す方向が良さそうなのかわからないまま進むことになります(これはムダを生み出しかねません)。
スプリントレトロスペクティブ
スプリントレトロスペクティブでは、スプリントの仕事の進め方や起きた出来事を検査し「何がうまくいったのか」「何がうまくいかなかったのか」「どう改善できるのか」を考え、なにを実験するか、改善に取り組みかを決めます。スプリントレトロスペクティブが効果的に機能していないと、うまくいかなかったことなどがそのままになってしまい繰り返してしまいチームのパフォーマンスがあがりません(結果として成果が出ないということになります)。
スクラムイベントはチームで開発していくために必要な場
こうして整理してみると、スクラムイベントは「チームで協働して少しずつ方向や作るもの、やり方を検査、適応しながらプロダクトを作っていく」ために必要な場で、単なる進捗報告や一方的な伝達の場ではなく、それぞれ検査と適応の場であることが分かります。
もし「スクラムはミーティングが多い(または長い)」と感じるなら、以下のポイントをまずは検査してみるといいかと思います。
スクラムイベントの目的が明確か?(何のための場か、参加者が理解しているか)
必要な人が参加しているか?(関係者が適切に関与しているか)
ファシリテーションが機能しているか?(議論がスムーズに進んでいるか)
アウトプットが明確か?(結果、次の行動が決まっているか)
これらのことを検査して起こっていそうであれば、チームで話し合ったり、改善するために取り組みをしてみるといいかと思います。