六人の嘘つきな大学生
2011年、東日本大震災直後の就職活動。日の出の勢いのITベンチャーが創業後はじめて行う新卒採用。数千の応募者から最終選考に残った6人に与えられた最終課題はグループディスカッション。人事担当者の「ディスカッションの内容によっては6人全員に内定を出す」という言葉に、6人は全員内定をめざそうと選考までの数週間にチームワークを深めていく。
6人の顔ぶれは、自慢するところもなくのんびり過ごしてきた参謀タイプの立教生。ハイスペックでリーダーシップのある慶大生、気合いと根性とコミュ力の明大生、国際問題に関心があってしょっちゅう海外旅行に出かけてるお茶大生、マジメで行動力のある早大生、秀才で無口な一橋生。苦笑してしまうほど実にステレオタイプ。
この「登場人物紹介」が、読み進めるにつれ、どんどんひっくり返っていくという趣向なのだが、今どきのミステリは、ここまでやらなきゃダメか〜とため息が漏れるくらい、白がひっくり返って黒になり、さらにまたひっくり返って白になり…と二転三転する。
人が人を選ぶ「就職活動」で、大学生たちは選ばれるために嘘をつき、企業もまた選んでもらうために嘘をつく。そんな就活という「ならわし」の枠組みそのものもシニカルに眺めながら、6人の大学生たちがそれぞれに持っている多面性が少しずつ明らかにされていく。人間の描き方が深いかといえば、さほど深遠というわけではなく、叙述トリックに依存している部分が多いが、著者が人間の弱点や醜さをひっくるめて、それでも前向きに捉えていこうとする姿勢には共感を覚えた。次回作も是非、手に取ってみたいと思う。
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