根号
$ a を複素数とする。
$ a の平方根と、$ a に根号をつけたもの$ \sqrt{a} は、異なる。
$ a の平方根は、$ x についての2次方程式$ x^2 = a の解である。
よって、$ a \ne 0 なら$ a の平方根は2つある。
$ \sqrt{a} は、$ a の平方根から1つ選んだものである。選び方は、学習が進むにつれて、じわじわ拡張されている。
Step1(中学生)
$ a は非負実数全体を考える。
$ a の平方根のうち、非負の方を$ \sqrt a と定義する。
Step2(高校生)
$ a は実数全体を考える。$ a \ge 0 の場合はStep1と同じ。
$ a < 0 の場合、$ a の平方根は純虚数となるため非負という概念がない。そこで、$ \sqrt a = \sqrt {|a|}i と定義する。
Step3(大学生)
$ a は複素数全体を考える。$ a が実数の場合はStep2と同じ。そうでない場合、次のように定義する。
まず、$ a = r (\cos \theta + i \sin \theta) と極形式で表す。
$ r は$ a の絶対値であり、$ r > 0 を満たす。
$ \theta は$ a の偏角のうち、$ -\pi < \theta \le \pi を満たすものである。
このとき、$ \sqrt a = \sqrt r \left ( \cos \frac{\theta}{2} + i \sin \frac{\theta}{2} \right ) と定義する。
まとめ
$ a = 0 の場合、$ \sqrt a は$ a の平方根と同じものである。
$ a \ne 0 の場合、$ \sqrt a は$ a の平方根のうち片方である。
片方の選び方は、「複素数平面上の右半分(虚軸上にあるときは上側)にあるもの」である。
しかし……
文献によっては$ a の二つある平方根のことを$ \sqrt{a} と呼ぶことがある。
このため、実際には$ \sqrt{a} と言ったとき、主値なのか平方根全体なのか文脈から判断する必要がある。
混乱の原因は……
正の実数の正の平方根を単に平方根と略すことがある
実数に対して$ a^{\frac{1}{2}} = \sqrt{a} と定義することがある
複素数に対して(普通は)$ a^{\frac{1}{2}} \ne \sqrt{a} である。左辺は平方根全体を返す多価関数、右辺は主値