2025/10/21
西尾勝「行政の活動」1992
本章では、わが国の地域社会における行政活動と住民活動の接触面をめぐる状況について考察を補っておくことにしたい。p.141
内務省「部落会町内会等整備に関する訓令」1940
GHQ「政令15号」による解散 1947
1949年廃止
わが国の自治会町内会は、少なくとも都市地域の町内会の大半は、決して純然たる自発的結社ではない。むしろ準公共団体というべき性格の団体である。p.142
特徴
国または自治体の奨励によって組織され、国または自治体がこれを利用し助成しているために存続している
全国各地にほぼ普遍的に組織され、その区域は重複もなく空隙もなく整然と区画割りされている
その会員は個人でなく世帯である
建前上は任意加入であるが、事実上は強制加入に近い運用がなされている
PTAと共通の特徴
自治会町内会の活動のなかには、災害のときの相互扶助、冠婚葬祭のときの助力、祭り・町内運動会の催しなどといったように、純然たる住民自治活動というべきものがある。しかし、それ以上に、回覧板の回送、市町村の広報紙・害虫駆除剤等の各戸配布、防犯灯の設置管理、共同募金・歳末助け合い募金・日赤会費・社会福祉協議会会費などの臨戸徴収等々、市町村の行政活動を補完・代行・補助するといった性格の活動の方がむしろ多い。行政活動と民間活動の境界が曖昧であったように、行政活動と住民活動の境界も誠に曖昧なのである。p.143
この種の行政委嘱員がどのような人々から選任されているのかといえば、その大半は、まずPTAで活躍し、次いで自治会町内会の役職を歴任して、労を厭わぬ世話役という世評の確立された人々のなかから選任されていると考えて、おおむね間違いないであろう。そして、この種の行政委嘱員の経験者のなかから市町村に設置される審議会協議会等の地域代表委員が選任されている。自治会町内会は地域活動家を育成する究極の母体なのである。p.144
「新しい住民組織」としてのコミュニティの形成がわが国で論議され始めたのは昭和40年代の半ば以降のことであった。しかし、このコミュニティということばと結び付けて実際に推進された施策は、全国各地にコミュニティ・センターと呼ばれる新形態の多目的集会施設を整備する事業にほぼ限定されていた。したがってそれは、旧来の自治会町内会を正面から改革しようとする動きにまで発展することはなかった。p.145
イギリス・アメリカではコミュニティがアソシエーションと対比で使われる
個人及び個々人が結成する結社が多元的に共存する地域共同社会がコミュニティである。その意味では、コミュニティはもともと自由独立の個人と結社の多元的な存在を前提にしている。p.145
多元的な個人と結社がその地域共同社会の共通目的のために穏やかな連帯を形成するとき、そこに生れるものを指してコミュニティと呼ぶ用法も少なくない。p.145
このように考えるなら、政治権力から自立した結社が多元的に存在しないようなところでは、本来のコミュニティの形成は考えにくいということになりそうである。p.146
要するに、この選択をめぐる論争は、住民全員の相互扶助の責務を重視するか、自発的意思に基づく主体的行動を重視するかの対立である。p.149
ボランティアの無償性をめぐる論議は、実践の世界では、きわめて生々しく、切実な問題である。p.150
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