すべてのデザイナーのかたわらに人類学者を――人類学者・中村寛【連載:デザインと人類学のフィールドノート】
すべてのデザイナーのかたわらに人類学者を――人類学者・中村寛【連載:デザインと人類学のフィールドノート】|designing
もちろん、デザイン領域と人類学領域の接近は、まったく新たな事象というわけではない。過去にも、デザインが人類学の方法論や認識論との親和性に気づき、人類学(とくにそのなかでもエスノグラフィ)から学ぼうとしたことがあったし、人類学がデザインの方法から学ぼうとしたこともあった。
第一に、「デザインのための人類学 Anthropology for Design」。人類学のパースペクティヴ、方法、認識論や存在論をデザインに活かすというもの。たとえば、デザインリサーチやユーザーヒアリングの際に、エスノグラフィの方法論を導入するなどがこれにあたる。
第二に、「人類学のためのデザイン Design for Anthropology」。デザイン領域で培われた方法を人類学に活かそうというもの。たとえば、プロトタイピングによる試行錯誤の方法や参加型デザインの方法を、人類学に取り入れるといったものがこれに該当する。
第三に、「デザインの人類学 Anthropology of Design」。これが最も一般的な人類学のアプローチではないかと思うが、デザインやデザイナーについて、人類学的な探究をおこなうというもの。たとえば、デザイナーがどのように制作に従事するのか、デザインされたものごとが人びとの生活や認識のあり方をどのように(よくもわるくも)変化させるか、についての研究などがこれにあたる。
宮本常一
デザイナー
人類学
デザイン人類学