東京大学 奈良研究室
所属
研究内容
研究テーマは「逆問題の計測・数理・応用」です。
逆問題とは,現象を観測し,現象の原因を推定する問題です.因果関係を逆にたどることからこう呼ばれ,一般に因果関係を順方向にたどるより,はるかに難しい問題となります.そして工学の多くの問題は逆問題であり,例えば,脳や人体の非侵襲計測,発電所や構造物の非破壊検査,瓦礫や土砂中の埋没者を探索する災害救助,RFIDタグを用いたユーザインタフェースなど,あらゆる分野に現れます.
本研究室では,何を観測量としそれをどのような構造で計測するかという逆問題の定式化から始め,因果関係を繰り返し計算する探索的手法に頼ることなく,逆問題の解を直接再構成する数理手法を開発し,さまざまな応用展開を図っています。
東京大学工学部ガイドエンジニアリングパワーの紹介記事もご覧ください.
https://gyazo.com/6902f3d42c2041fb1539bb594c3dfc40
人間が五感でものを感じたり,あるいは自分で体を動かそうとすると, 脳内の感覚野,運動野と呼ばれる部位の神経に電流が流れます. するとその結果,電磁場が頭部の外側に漏れてきます. 人間の頭部表面で電位もしくは磁場を観測し, 脳の内部のどこに神経電流が流れたかを推定する問題は 脳波(Electroencephalography: EEG)逆問題,脳磁場(Magnetoencephalography: MEG)逆問題と呼ばれ, てんかん等の医療診断,脳機能解析,ブレインマシンインタフェース等に 応用することができます. この問題に非線形最適化を適用した場合,初期値次第で局所最適解(偽の解)に収束してしまうというのは大問題です.そこで,脳磁場逆問題に対する直接解法を導出しました. 具体的には,双極子位置をxy平面に射影した位置を根とする代数方程式の係数を 脳磁場データで記述することに成功しました.また多重極モデルに対する直接解法を用いることで,脳回に分布した逆向きの神経電流源も精度良く推定できることを示しています.