LtVPickUp~Japan earmarks another ¥802.5 billion for chip startup Rapidus_20250418
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▼ケース記事
https://www.japantimes.co.jp/business/2025/03/31/companies/japan-chip-startup-rapidus-more-aid/
▼記事の要約
日本政府は、半導体スタートアップ「Rapidus(ラピダス)」に対し、最大8025億円(約54億ドル)の追加支援を行う方針を示しました。これは、米中間の地政学的緊張の中で、半導体供給の安定を図る国家戦略の一環である。
支援の内訳は以下の通り:
前工程(チップ製造):最大6755億円
後工程(パッケージングやテスト):1270億円
これにより、政府からRapidusに投入される公的資金は累計で1兆7200億円に達する。
Rapidusは2025年4月にパイロットライン(試験製造)を稼働予定であり、2027年には次世代2nmクラスの半導体の量産を目指している。同社はトヨタ、ソニー、ソフトバンクなどの日本大手企業に支援されており、台湾TSMCに対抗する日本発の先端ファウンドリ(半導体受託製造)企業として注目されている。
▼会社概要 Rapidus
概要 (Rapidus)
設立時期: 2022年
設立場所: 東京(日本)
創業者: 代表取締役社長 小池 淳義(元ソニー副社長)
事業内容: 日本の最先端ロジック半導体の国産ファウンドリ企業として、2nm以下の次世代半導体の設計・開発・量産を行う。国家プロジェクトとして、日米の連携のもと産業基盤の再構築を目指している。
市場規模:世界の先端ロジック半導体市場(2nm以下)は2030年までに数十兆円規模に成長が見込まれており、日本はこれまで遅れを取っていたが、Rapidusにより市場参入を目指す。
ターゲット市場: 2027年に向けてグローバルな先端チップの受託製造(ファウンドリ)市場への参入を狙う。現在のターゲット顧客は、先端AI、HPC、自動車向けロジック半導体分野。
製品/サービス
詳細: 北海道・千歳市に建設中の最先端ファブを拠点に、2nm世代のロジック半導体を製造。米IBMと提携し、ニューヨーク州のR&D拠点と連携しながら開発中。
独自性:
日本初の商業規模の2nm対応ファウンドリ
IBMとの技術連携による短期間での開発推進
国家支援による資金と政策的後押し
欧米に偏った供給網の多極化に貢献
財務情報
累計資金調達額: 約3073億円(政府支援含む、公的資金)
主な支援元(株主・パートナー):トヨタ自動車、ソニーグループ、ソフトバンク、キオクシア、日本政府(経済産業省
競合環境
競合他社:TSMC(台湾)、Samsung Foundry(韓国)、Intel Foundry Services(米国)
競合環境: 2nm以下の先端半導体製造は、世界でもごく少数の企業しか技術的・資本的に対応できない超ハイエンド領域。Rapidusはこれにゼロから参入する国家戦略プロジェクト。
▼初期仮説
初期仮説(個人的にはこういう点が起業家にとっても価値だと思うので深掘りたいッス、な論点)
ディープテック領域では「国家課題との整合性」があると、スタートアップでも兆円単位の資金にアクセスできる。
Rapidusの主な競争優位性は、2nm世代のロジック半導体の量産できる設計能力にある。
▼事前リサーチ by ちょ
Q.政府支援の背景にはどのような要因があるのか?
経済安全保障(Economic Security)
要因:
先端半導体の海外依存を減らし、国家の中核産業を国内に持ち直す動き。
米中対立や、台湾有事リスクへの対応。
現在、日本は先端ロジック半導体の90%以上を輸入依存。特にAI、軍事、先端自動車などの戦略分野で不可欠な半導体を「外に頼れない」状況。
先端ノード(2nm以下)の国内空白
要因:
日本国内に最先端の量産プロセス(EUV/GAAFET)を持つ企業が存在しなかった。
キオクシア、ルネサスなどはメモリや旧世代ノードが中心。
日本は素材・装置では世界トップだが、製造(ファウンドリ)では大きく出遅れていた。
2nmは次世代の「覇権ノード」として各国が支援合戦中(例:米Intel、韓Samsung)
戦略的産業連携(大企業+国家)モデルの導入
要因:
トヨタ、ソニー、ソフトバンクなど大手が出資し、産業横断的に支える構造があった。
特定企業の利益ではなく、「日本の製造業・技術主権のため」という大義。
Rapidusは「JAPAN CHIPS INC.」というべき官民連携の象徴になっている。
✅ 4. 米国との技術・地政学連携
要因:
IBMとの連携や米国との共同研究体制があることで、安全保障面でも日米連携に貢献。
日本が単独で進めるより、米国と共にサプライチェーン再構築の一部を担う。
米国のCHIPS法と連動した形で、日本も「日本版CHIPS法」を推進中。
Source: https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semiconductors_and_digital.pdf
Source: https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA204P60Q4A121C2000000/
Source: https://www.rapidus.inc/
Source: https://www.timesunion.com/business/article/IBM-Japanese-chip-company-to-partner-on-2nm-17651386.php
Source: https://www.bain.com/insights/prepare-for-the-coming-ai-chip-shortage-tech-report-2024/
Q.なぜ日本が2mn以下の半導体製造に遅れたか?
垂直統合モデルの崩壊と“分業化”への乗り遅れ
背景:1980〜90年代、日本はNEC・東芝・日立などの電機大手が**垂直統合型(自社設計・自社製造)**で成功していた。ところが2000年代以降、ファウンドリモデル(設計と製造の分業)が台頭。この構造転換に日本は乗り遅れた。
比較:
TSMCが“設計者のための製造工場”になって世界を制覇
日本は自社製品志向が強く、他社のためにチップを作るビジネス文化が根付かなかった
製造への投資不足:EUV装置・クリーンルーム・人材
背景:2nm以降では、EUV(極端紫外線)露光装置が不可欠。しかしEUV1台あたり約200億円超という超高額設備投資が必要。
比較:
TSMC・Samsungは10兆円単位で設備投資
日本企業はリスクを取らず、旧世代ノードやアナログ製造に留まる選択が多かった。
デジタル需要の見誤りとスマホ/クラウドの波を逃す
背景:2000年代のスマートフォン革命、クラウド・データセンター需要の爆発に、日本は戦略的に乗り遅れた。
比較:
TSMCはApple・NVIDIA・AMDを顧客に先取り
日本勢は車載用、家電向け、産業機器向けなど「守りの設計」が多く、汎用ロジックへの展開が弱かった
ファウンドリ人材の不足・流出
背景:TSMC、Samsungなどでは、ファウンドリ特化型のエンジニアが大量育成されたのに対し、日本は設計/製造/営業を分けず育てたためにスーパースペシャリストが生まれにくかった。また、バブル崩壊・リストラにより人材流出や高齢化も加速。
政策支援と産業ビジョンの欠如(遅すぎた政府介入)
背景:アメリカ・中国・台湾・韓国は2000年代から国家戦略として支援を実施。一方、日本は2021年まで明確な国家支援戦略を持たなかった。
比較:
米:CHIPS Act(520億ドル)
韓:K-Semiconductor Belt戦略
中:国家集積回路産業基金
日本:2021年にようやくRapidus構想スタート
Source: https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semiconductors_and_digital.pdf
Source: https://asia.nikkei.com/Spotlight/The-Big-Story/Japan-s-chip-reboot-TSMC-Samsung-Micron-pave-way-for-silicon-revival
Source: https://www.mckinsey.com/industries/semiconductors/our-insights/exploring-new-regions-the-greenfield-opportunity-in-semiconductors
Source: https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semiconductors_and_digital.pdf
Source:https://www.japantimes.co.jp/business/2024/08/05/companies/chip-industry-talent-hunt/
Q.なぜ2nmの半導体が必要なのか?
省電力性の極限進化 
小さい=低消費電力で同じ計算ができる。
回路が小さいほど電圧も電流も減る → 消費電力が減少。
スマホやノートPC、IoTデバイス、センサーなど、バッテリーで動く機器にとって決定的な差を生む。
1nmの差が、電力効率で20〜30%改善することも(IBM試算)
AI・HPC・5G/6Gなどの“演算モンスター”を支える
次世代AI(LLMなど)では、処理性能×電力効率が命。
ChatGPTのようなLLMは、何百億ものパラメータをリアルタイム演算。
こうした処理は、GPUやAIチップ(TPU, NPU)で行われるが、それらも最先端ノード(3nm以下)で製造される。
より小さな回路で、より多くのトランジスタを搭載 → 並列計算性能が大幅に向上
次世代自動車(ADAS, 自動運転)への適用
自動車の中に“走るデータセンター”が入る時代へ。
自動運転レベル4以上では、LiDAR、カメラ、レーダーなどからの超高速処理が必要。
1台あたり100以上のチップが搭載される中、低発熱・高演算・小面積が求められる。
グローバル競争:覇権を握るための“技術国力”
2nm以下を作れる国は、サプライチェーン全体を支配できる。
先端半導体の供給元は現在、台湾(TSMC)と韓国(Samsung)と米国(Intel)だけ。
日本、EU、中国も2nm以下に国家予算を集中し始めている。
これは技術主権・経済安全保障の戦い。
カーボンニュートラル/脱炭素への貢献
電力消費が全世界の問題に。
データセンター単体で中規模の都市並みの電力を使う時代。
より電力効率の高いプロセッサ、ストレージ、通信チップが求められる。
2nm以下での電力最適化は、脱炭素に直結する社会課題対応。
Source: https://www.theverge.com/2021/5/6/22422815/ibm-2nm-chip-processors-semiconductors-power-performance-technology
Source: https://www.astutegroup.com/news/industrial/tsmcs-2nm-venture-a-testament-to-innovation-amid-complexity/
Source: https://www.linkedin.com/pulse/how-semiconductor-chips-revolutionizing-self-driving-kishore-m-m-c--ubhmc/
Source: https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/joho/conference/semiconductors_and_digital.pdf
Q.Rapidusの“技術的”な競争優位は何か?
2nmプロセスの採用(日本初)
日本初の2nm世代のロジック半導体の量産を目指す企業。このノードは、現在TSMC・Samsung・Intel以外ほぼ参入していない超先端分野。
メリット:
トランジスタ密度が飛躍的に向上
消費電力を40%以上削減(IBM試算)
日本企業では前例なしの“2nmファウンドリ構想”
IBMとの技術連携(GAAFET技術・EDA導入)
IBMが開発した2nmノードのGAAFET(Gate-All-Around)構造やEDAツールをRapidusが導入。
GAAFETはFinFETに代わる次世代半導体構造で、電力効率・スイッチング性能が大幅向上。
RapidusはIBMのAlbany Nanotech Complex(米国)で技術習得を進行中。
国内唯一のEUV対応新設ファブ(北海道・千歳)
先端プロセスに不可欠なEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置に対応するファブを新規に設計・建設。
EUVリソ技術はASML(オランダ)製の装置が必要、世界でも調達困難。
日本でEUV対応を明確に打ち出して新ファブを設計したのはRapidusが初。
前工程〜後工程の一貫体制(OSAT内製構想)
通常は外部委託される後工程(パッケージ・テスト)も自社対応する計画。
政府からの支援も、前工程:6755億円/後工程:1270億円と分けて提供。
一貫体制により、品質・納期の安定性、設計・製造の連携が取りやすくなる。
日米の技術融合:日本の製造力 × 米国の先端ノード
Rapidusの技術戦略は、「日本の製造インフラ・品質管理力」と「IBMなどの最先端技術開発力」を融合させる点が独自。
日本国内には素材、装置、エンジニアリングの供給力が強い(信越化学、東京エレクトロンなど)。
米国との連携により、国際標準の技術ロードマップに乗れる。
Source: https://www.rapidus.inc/news_topics/news-info/rapidus-announces-strategic-partnership/
Source: https://newsroom.ibm.com/2021-05-06-IBM-Unveils-Worlds-First-2-Nanometer-Chip-Technology,-Opening-a-New-Frontier-for-Semiconductors
Source: https://www.rapidus.inc/iim/
Source: https://www.meti.go.jp/policy/economy/economic_security/semicon/index.html
▼結論
結論(リサーチの結果、個人的にはやっぱりこういう点が起業家にとっても価値だと思うッス、な論点)
国家と戦略的に接続できる領域に挑むことは、資金獲得における“新たなパラダイム”を生む。
構造変革の“旗”を掲げる起業家がリーダーになる時代
日本の産業構造の客観視をもち、「この産業はこうあるべき」を掲げられるかが勝負。
製造技術そのもの以上に、「自前でチップを作れる国」というポジショニングを確保。
最先端ノード = パワー、ではなく“未来の社会の前提”
自社開発に固執せず、“導入 × 実装 × ストーリーテリング”でポジショニングを取る力が武器になる。
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