読書メモ: 失敗の科学
会社の人が面白い言うてたので読んだ。
全章を通して、「失敗は成功の元」「失敗は悪ではない。進んで共有する組織を作ろう」というメッセージが強かった。
現実問題として、失敗を認めたくない心理現象や共有できない組織問題があることで失敗が(無意識に)隠蔽されてしまう問題を指摘している。
こういった隠蔽を作り出している要因は大きく内的要因と外的要因に分けることができる。
内的要因
認知的不協和
不快な状態に陥ると無意識に脳が事実を歪めた記憶を作り出すこと
外的要因
失敗を非難する。犯人を探し誰の責任かを明確にしようとする働き
また、多くの環境では「ミスはあってはならないこと」「ミスは責任を追求され非難される」という考え方がある。非難はSNS等でより顕著になっている。
ミスを許容しない文化は帰って失敗の隠蔽を誘発し意見を出すこともしなくなる。
ミスを許さない「懲罰文化」対比の文化に「放任文化」がある。
放任すれば怠慢になるなるのではないかと組織では受け入れ難いが、この懲罰と放任は共存が可能である。
現実は複雑な要因が絡み合っている。脳は一番直感的な判断を下しこの判断はほとんどの場合誤りである。このバイアスを自制心でコントロールする必要がある。
失敗に対して反射的に反応することをやめ、まずは失敗分析。次に再発に対しての予防策を講じることを念頭におく。
失敗は「しても良い」ではなく、「欠かせないもの」であるという認識を持ち失敗ありきで設計をする。
失敗が起こった時に分析ができるようデータを収集する
データからフィードバックを得る
小さく検証し、改善する
完璧主義をやめる
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失敗が起きた時どうするか。
「改善につなげる」と考える人がほとんどだが、実際は失敗や欠陥に関わる情報が放置されたり曲解されたりして改善に向かはないことがある。
失敗が対処されないことを「クローズド・ループ」と呼ぶ。
失敗のマネジメント
人類は失敗によって進歩してきた。かつてプトレマイオスの天動説や治療法として血を抜く「瀉血」は正しいとされたが反証することで新しく正しい仮説を立てることができる。
現代でも航空パイロットと医者の領域での失敗への向き合い方が例に出されている。
航空業界は過去の墜落などの事故から学びを得て今では飛行機の事故に遭う確率は0.0009%となっている(ex. 自動車の死亡事故0.33%)。一方医療過誤での死亡事故は1日1000件起きているとか合併症では1日1万件起きている(毎年4万4000~9万8000人)
航空と医療の領域を比較すると失敗への取り組みに大きな差があった。
いずれも失敗の原因は組織的なものと個人の判断ミスがある
上下関係
部下の主張を妨げる
一つのエラーに集中しすぎて時間感覚を失う
ex. 着陸前に車輪が降りているかわからないトラブルが発生。原因追及に集中しすぎて燃料切れになる
これを改善するために航空業界は徹底的にデータを集め(ex. ブラックボックス)改善を試みた。また、組織文化に対しても失敗を責めない、処罰しない、個人の責任にしないとする方針をとっていた。
一方医療業界では医療業界は失敗は「偶然起こった仕方ないもの」とする文化が根付いており、報告書などでの失敗分析等も行われていないクローズドループに陥っている。
正しい失敗への向き合い方は次のものだと絵言える
失敗を報告する
個人ではなく構造の問題としてどうすれば防げたかを考える
人は嘘を隠すのではなく信じ込む
先の例であったようになぜ人は失敗を隠してしまうのか。
それは自分の信念と相反する事実を突きつけられると、自分の過ちを認めるよりも事実の解釈を変えてしまう心理メカニズムにある
一般的に認知的不協和と言われるもの。
興味深い例が載っていた。死刑の有無に対しての議論で賛成案を補強する論文と反対案を補強する論文を読ませる。説得力のある論文によりお互いの考えを理解できるようになりそうではあるが実際は逆のことが起きた。賛成派は自説の論文は素晴らしいもので反対派の論文に穴があるとした。反対派はそれと反対の反応を示した。
人は自分の信念にしがみつけばしがみつくほど、相反する事実を歪めてしまう
つまり、先の例で出した医療現場では失敗を認知的不協和により無意識に隠していていた。
自分の見つけたいものしか見つからない。自分が欲しいものだけを探し、持論を脅かす者からは目を背ける。
まだわかっていないこと(≒失敗をすること)の方が重要
そして脳は勝手に記憶を改竄して有る事無い事をでっち上げることを覚えておく
単純化の罠から脱出せよ
我々は世の中を単純化していることが多い。ついつい「答えはわかっているんだからやらなくても良い」と高を括るがこれは「講釈の誤り」という心理的傾向にあり根深い問題である。
世の中は単純だと思っていると試行錯誤の必要が生じない。自分の誤った直感に従ってトップダウン的に判断をしてしまう。
単純化からだ出するには
量をこなす
RCT
マージナルゲイン: 小さな果然
計測せよ