20200404- 雑記中村
本研究以外のことについて
一級建築士試験
現在施工について勉強中。学生時代は連続して短距離走を走り、社会人になると長距離走を走るようになると知人が言っていました。勉強というのは限られた期間で求められる結果を出す短距離走です。博士までの研究は3か月に一度ゼミがあるので、短距離走になるのですが、短距離走は30歳を過ぎるとできないとも言われます。おそらく他に脇目をふるのが難しいのと、どこかで安定していないと集中ができないが、安定させてくれる対象がないという理由だと思います。
構造力学が面白い。微分方程式を5年ぶりに使いましたが、予備校の教科書には公式のみが書かれていて導き方が記されていません。建築意匠の面白さの一つは力学が形として現れているところだと思うので、原理に触れられた學部生活は良い経験でした。
残り3週間にしてまあまあのでき。基礎的な全範囲を網羅するインプット学習に2か月、アウトプット学習に1か月くらいか。
試験:あと5点くらいでダメでしたので、来年頑張ります。
←門間:お疲れさまです。案外難しかった感じでしょうか。
→中村:ありがとう。今年は例年よりも難しかったそうですが、純粋に準備不足でした。大学院試験をパスした人なら独学でもいけると思います。
『選択のトキ』群千キリ、集英社、2017年
ストーリーは、ある日、宇宙人が高校生の男の子の前に突然現れて、自分の性別を決めるために材料を共に集めるというもので、思春期と性意識について考えたことのある人にお勧めのマンガです。とくに宇宙人の「トキ」が、性別を決める理由が出会った男の子「ミツ」に憧れたから、という点がとても興味深い。ボーヴォワールの『第二の性』に「人は女に生まれるのではない、女になるのだ。」という言葉がありますが、男性の場合は意識している人がかなり稀と思う。そういう意識を描いた点にこのマンガの面白さがあると読みました。
加藤諦三
『自分に気づく心理学(愛蔵版) 』
『自分のうけいれ方(愛蔵版) 』
『親離れできれば生きることは楽になる 自分がもっと強くなる“一人立ち”のすすめ (PHP文庫) 』
『自立と依存の心理 本当の「心の支え」を見つけるには (PHP文庫) 』
『「やさしさ」と「冷たさ」の心理 自分の成長に“大切な人”を間違えるな PHP文庫』
最近、ある知人について思うところがあって、”甘え”について知りたかったので、いくつか読んでみた。
甘えや依存というのは、基本的に親と子との関係によって発生するとのことで、神経症な親に忖度し甘えられなかった子どもが、満たされなかった欲求を大人になっても求めてしまうらしい。したがって大人になった後でも、甘えが解消されれば、その後は自立し、欝になったり非行に走ることはなくなる。この時に、親に対する自分の本当の気持ちを自覚することが重要で、不満があったなら不満があったと言うことが大事である。これが出来ずに子どもを持ったりすると、親子の構造が再生産されてしまう。逆に自分が甘えられなかったと自覚した人は、これまで頑張って生きてきた自分を褒めることが大事だという。
東寺百合文書
授業で読んでいる古文書群で、京都の東寺に伝来する史料。今のところ応永年間の晩年をやっていますが、桜井英治の『贈与の歴史学』という本で読んだ「礼銭」の史料を見つけて興奮しました。幕府から補任権をもらうために、お礼としてお金を"あげる"という。財力がない幕府がお金を得るためにできたシステムは、昨今の賄賂にも通じるところがある。
料理の話
物を作るのが好きということの延長で、料理を作ることが趣味になっている。これは昨今のコロナ事情もあるかもしれませんが、とにかく作っていて楽しいものを作る。研究と勉強の気晴らしになるかとも思う。
クラブハウスサンド
最近まではクラブハウスサンドに凝っていた。喫茶店で出るようなおしゃれなものです。8枚切りの食パンにレタスとハムとトマトを挟むくらいですが、パンを圧縮してトーストするときれいにできる。うちでは熱したフライパンにパンを載せ、上から水を入れたやかんで荷重をかけている。するとパンの耳までサクサクになる。朝の楽しみになるので寝覚めもよくなる。
子育てについて
細田守の映画「バケモノの子」を今更見た。子育てがテーマになっていて、最近「教育」と「子育て」の違いを考えたりしたこともあり、中々興味深い内容でした。
・スーザン・フォワードの『毒になる親』:近年流行した「毒親」の概念が話されていたりする。
・河合隼雄『家族関係を考える』:家族の関係を類型化する手法で人格の特徴を解明する。
・『不倫する肉体』(原題:Las oscuras primaveras):メキシコの映画
加藤諦三の本でもありましたが、教育家の家系は「教育」はするが、「子育て」が疎かになっていることが多くあるという。これは結構当て嵌まっていて、教育関係者を親に持つ知人は、外殻の社会的な役職はしっかりしているが、内面に悩みを抱えている。俗に言う、働く意義を見出せないということでしょうか。「仕事とは」「働くとは」という考えについて、「働くのはあたりまえのこと」という意識が解決できずにいる。これからの学校は「教育」以上に「子育て」が必要になるかもしれない。
さて、バケモノの子は、子育てがテーマと書きましたが、子どもを育てることは、親が客観的に自分の行動をみて精査することも同時に行なわれる。主人公の九太と、親代わりの熊徹は、そんな親子関係を結んでいる。周りをかためる熊徹の友人からの影響を受け主人公は「育って」いく。「成長」ではなく「育つ」と表現したのは、1が2や3になるのではなく、0が1になるような印象でしょうか。最後に熊徹が「剣」になって主人公の心に入るのですが、これは「良心」みたいなものを指していると解釈した。こうして親と向き合って育った子は良いが、ライバルのように親と向き合えなかった子どもは、心に闇を抱えて暗黒面に落ちてしまう。最後はやり直しはきくというラストになっている。
親と向き合えない子どもは、だれと向き合ったらいいのか。これがおそらく友人や恋人であろう。そして、恋人の場合、母親のような無償の愛を求めることがある。『不倫する肉体』に、不倫している母親をわざと困らせようとする子どもが出てきますが、恋人に対してこのような行動をする。この期間に、出てくる行為は本音ではなく、もっと深い欲求を伝えるための手段で、一定期間、応えていると自然と解消される。
調査について
先日、文化財の所見を初めてとる機会に恵まれた。建築を客観的な言葉だけで表すのは『建築を歩く』以来ですが、論の手順が予め決められている点は異なる。
「分離派建築会100年展」パナソニック汐留美術館
久しぶりに美術館に行った。内容は、建築学生なら誰もが知っているような内容であったが、スケッチの原本が見れて興味深かった。あとは上野の博覧会場のカラー鳥観図など、大正期の社会と接続している様子が見られたことは、これまでの建築建築した分離派とは異なっていて、文明開化的な歴史観に通じていて親しみやすい。この計画で分離派を意匠担当に任命したのは伊東忠太らしく、明らかに裏がありそうな印象で、そこら辺の流れは気になりました。ほかには、滝沢真弓の「山の家」の石膏模型がきれいだった。建築の造形美もさることながら、工作的な面白さ、どうやって模型を作るかというようなことを考えた。滝沢は長野県出身とあって、感性的に自分に合っているのか。滝沢真弓の「日本農民美術研究所」は、漆喰左官塗の近代風一階に、白川郷の合掌造りの民家が乗ったような建築で、忠長の緑艸舎に似ている。宮本忠長の父は、逓信省の設計師で、山田守や山口文象と働いていたからか、忠長にも分離派の流れを感じてしまう。また、山田守が竹中工務店にいたり、逓信省や法務省といった国家や、白木屋などの商人がクライアントになっていて、そこら辺の関係をもっと掘り下げていくと、藤森照信の『明治の東京計画』のような論文が書けそう。この手の展覧会で若干いつも思うことは、分離派の話を聞いて、始まりはよく分かるのだが、終わりが分からない。前川や丹下が出る世界といかに接続するのか?研究史上の問題とも思う。
→門間:宮本忠長とか、それ以降の建築家との関連がもう少しわかると、たしかに分離派の重要さがより容易に伝わると思う。堀口、山田と森田がいるだけでも、歴史を知っている人にとってはその重要さは明らかですが、現在残っている事務所とのつながりがないとふつうの人には実感がわかないですからね。うろおぼえですが、前川さんや丹下さんが戦前に出していたいろいろなコンペの審査員に、堀口とか山田はいたのではないかと思います。あと雑誌を見てると、明らかに業界の重鎮として扱われているのが堀口捨己ですね。増田が出している長崎市庁舎のコンペに森田慶一が審査員でいるとか、そういう話はある。歴史的な細かい話は、図録ではなくて、論文集
に載ってるかもしれません
グッドファイト
最近はアメリカのリーガルドラマを見ていました。シカゴの黒人法律事務所に、事件を起こしてクビになった二人の白人女性の弁護士が移籍するところから始まりますが、法律を通して時事問題に切り込んでいくのが面白い。基本的に女性始点で作られているところが面白いのだろうか。社会と内面が同時平行で進んでいくところに清々しさを感じる。トランプやフェイクニュース問題をアメリカでどのように考えていたのか、若干の偏りはありますが、感覚的に分かります。
上野「日本のたてもの展」
上野公園の3つの会場で開催された展覧会に行ってきました。日本建築、近代建築、工匠の3つ別れていて日本建築と工匠を見ました。日本建築の部は、一般にも分かるような模型を使った展示で歴史順に並べられていました。各所から模型を集めてきたようで、なかなか見応えがありました。ほぼすべての建築類型を漏れなく通史として扱っていたところが面白かった。なにぶんグッズの出来が良く、完売していたものがあって驚きました。一般の人に建築を知ってもらうためにとても良い展示でした。
工匠の部は近現代建築資料館で行なわれていたもので、工匠が描いた図面や古文書が並んでいた。建築をどうやって伝えるかが分かる、見応えがある展示でした。
史料調査
某寺で古文書の調査をしてきました。敷地内の裏手にある蔵で棚が並んでいて、中に江戸時代の古文書が大量に納まっていました。目当ての史料のほかにも重要な史料が眠っており、先人の史料整理だけではなく自分で史料を整理するところから始めないと重要なものを見落としてしまうことが分かりました。建築史の史料調査の方法については別でまとめようかなと思います。