「ブレードランナー」ファイナルカット版見てみた(2023/8/30)
from 本棚
「ブレードランナー」ファイナルカット版見てみた(2023年8月30日)
https://scrapbox.io/files/64ef64ac7a08d1001c71e021.png
マーサー教、プリスとレイチェル、もう一つのサンフランシスコ署など原作の煩雑な要素をカット、設定も再構築されほぼ別物となっている
イジドア、セバスチャンに謎の改名
マル特→老化病、動物病院の配送員→遺伝工学者と根幹の人物設定がまるっと変わってるのでやむなし
ディックの自伝小説に「ジャック・イジドアの告白」というのがあるらしく、ある種ディックはイジドアに自身を投影していたところがあるのかも。全くの他人が自分の分身を名乗るのは耐えがたいことであろう
レプリカント側(主にベイティ)の心理描写が増え、より多面的な作品となっている
核戦争後のディストピア→中華街&エセ日本風サイバーパンク
攻殻機動隊やPSYCHO-PASSなどバチバチに影響を受けていそうである
こういう世界観は大好物である
アンドロイド→レプリカント
アンドロイド
人間を出し抜く知力
サイコパスじみた行動
逃げ隠れるのが目的
脱走者というだけで即射殺
レプリカント
化け物じみたフィジカル
アクションシーンのためだろうか
感受性が強調されている
改名の主な理由はこれだろうか、アンドロイドというにはあまりにも人間的である
原作だと影の薄いベイティが一気に魅力的な敵役に
タイレル博士との対面や悲哀に満ちた最期は必見
短命にスポット、長生きが目的
目的が原作より明確
脱走時に悪いことしてる
原作のような「アンドロイドだから殺す」という理不尽感は薄れる
このためかデッカードの引き金にも迷いがない
アクションシーン
ベイティとのラストバトルは圧巻
いたそう
半裸疾走中年男性ベイティ、急にハトを持ってくるベイティ、カービィの中ボスみたいな動きをするプリスなどシュールなシーンも
タイトルに関して
アラン・E・ナースの小説「The bladerunner」が元ネタとのこと
ホテルの名前がブラッドベリだったりとディック以外のSF小説家のネタも含んでいる?
実在のビルらしい…
他にもありそう
翻訳がっかりポイント
「retire」
ここでは「殺す」「処理する」の意
「解任する」と訳されてる媒体もあるとか
冒頭の説明文の時点で訳されてなかったり
まぁそもそもこの設定いる?って感じではある
捜査局で脱走レプリカントの一覧を見るシーン
製造年月日が訳されていなかった
ベイティの最期の伏線になるためちゃんと訳してほしい
「the reprecant test or the lesbian test?」
「レズビアンのテストなの?」
韻が好きなのでうまいこと含めて欲しかったところ
「anybody like Dr.Tyrell's niece」
聞き間違いかも
デッカードがレイチェルがレプリカントであることを彼女に告げるシーン
そのまま「タイレル博士の姪」と訳されていた
まぁ曖昧にしとく必要もないのか
「about the business」と「in the business」
聞き間違えてそう
デッカードがレイチェルを匿うシーン
「仕事のこと」「殺される側」と訳されていた
businessって訳しづらいよね…
同じ単語で2人の正反対の状況を表現したうまいシーンだったのだが
最後のガフのセリフ「Too bad, she won't live, but then again who does?」
「彼女も惜しいですな、短い命とは」
後半が全く訳されてないね…
ラストシーンに関わる重要なセリフなのでちゃんと訳すべき
これはがっかりじゃ済まないような…
デッカードはレプリカントなんじゃないか問題
ユニコーンの折り紙はデッカードが見たユニコーンの夢がガフに知られていることを示している→デッカードはレプリカントである
一応監督の公式(?)見解らしい
レプリカントの人数をミスったことから起きた問題
ユニコーンの夢のシーンはDC版で追加
最後のレプリカントは誰かというファンの考察→監督が気に入る→DC版にユニコーンの夢入れちゃったという流れらしい
突貫で入れたせいか多少粗がある気が
根拠が雑
ガフにデッカードの夢の内容が把握されていたことが根拠とされているが…
そもそもここ以外でそのような設定は出てこない
作中でレプリカントは感情以外は人間と変わらないと説明されていたので(身体能力、知性、寿命なども違うけど)この設定はおかしいような
レプリカントであろうと人の夢をのぞき見するのは無理なのでは
合成記憶
身体能力の差
ベイティとの戦いのシーンでは、デッカードは終始追い詰められており、2人の身体能力の差が表現されていた
これはレプリカントvs人間の戦いだからこその状況である
デッカードがネクサス6型以前のレプリカントだとすれば説明はつく気もするが…
デッカードがベイティより古いレプリカントであるということになってしまわないか
だとするとベイティの寿命が先に尽きるのはおかしい
ブレードランナー用のデチューンモデルという可能性
ベテラン
デッカードはベテランのブレードランナーであることが作中で語られている
これは以下のように説明すること一応はできる
ブライアントはデッカードがレプリカントであることを知っており、合成記憶に合わせて話している
レプリカントを危険な任務に就かせ、使い捨てているのだと思われる
性能が人間並みのレプリカントを使い、自分は人間と思い込ませることで躊躇いなくレプリカントを殺せるようにしているのだろうか
それなら性能のよいレプリカントを使った方がよくない?
レイチェルと同様にタイレルの実験だろうか
正直合成記憶が便利な設定過ぎてどうとでも説明できてしまう
そもそも人間vsレプリカントという作品の根幹をなすテーマから逸れてしまう
人間とレプリカントの境界については原作ほど意識されていない気がする
ユニコーンの折り紙の指す意味とは?
折り紙→ガフのトレードマーク
ユニコーンであることより折り紙であることが鍵か
折り紙を見てデッカードがガフのセリフを思い出す
「Too bad, she won't live, but then again who does?」
「あんたもいつ死ぬか分からない(だから好きになさればよい)」みたいな感じだろうか
「あんたもいつ死ぬか分からない(そういうものだから彼女は仕方なかった)」かも
レプリカントの寿命がテーマだった本作にぴったりのセリフ
2049でデッカード生きてるらしいです…
放映版でのレイチェルみたいに寿命の制限がない個体もいるけどさぁ…
レイチェルはタイレル社で人間として過ごしてた辺りかなりのレアケース
最後まで人間として生きさせる気なら制限付けなくても納得
一方鉄砲玉レプリカントの扱いがどうなるか…
やはり監督が変な気を起こして急遽夢のシーンを追加したばかりに各所に粗が生じてよく分からないことになってたっぽい
さらに翻訳が合わさって意味分からないことになっていた
レプリカントだと解釈しても面白い(人間とそうでないものの曖昧性という原作のテーマには合う)けど、自分としては上に書いたような設定のガバが気になってしまうので、やはりデッカードは人間だと解釈した方が自然かなぁ
面白いとはいえ、後から設定変更するのは無理があるよ…