第8回 ジャズの知識 その1
ジャズにも派閥があるんだと驚く人もいるかも知れませんが、Powellのもとにピアニストが集まって他の派閥の悪口を言っているわけではありません。
前回(第7回)、ジャズミュージシャンは個人事業主と言いましたが、各ミュージシャンの事業を成り立たせるために最も重要な要件は、「個性」です。「個性」は、「即興(アドリブ)」と並んでジャズの演奏における最重要ポイントです。 個性をゼロから構築するのは簡単なことではありません。したがって、リスペクトする誰かの強い影響のもとで基盤をつくり、その上に自分の個性を築くということが行われます。 ほぼゼロから個性を築き、なおかつその個性が多くのミュージシャンに影響を与えた偉大なミュージシャンがジャズ界には何人かいます。そのひとりがBud Powellで、彼をリスペクトし影響を受けた人たちが「パウエル派」と呼ばれています。 ジャズという音楽ができてから100年以上の時間が経っていますから、クラシック音楽や絵画のように、スタイルの変遷過程というものがあります。それを「歴史」と呼んでいいでしょう。Bud PowellやBill Evansは、歴史上の重要人物と言えます。 それでは、そのような歴史を知っておくことが、ジャズを聴く上で必要でしょうか? よく言われることは、「ジャズを聴くのはお勉強じゃないんだから、そんな知識は必要ないよ。」
しかし僕は、もしジャズをできるだけ広く深く楽しみたいと思ったら、実際に聴くのと並行して、歴史の知識も増やしていくのに越したことはないと思います。次回はその理由を述べたいと思います。