第7回 アドリブソロ その7
6. “Sonny Stitt / Bud Powell / J. J. Johnson” (1949年, 1950年, Prestige)
http://www.catfish-records.com/nyumon/7/7.jpg
Sonny Stitt (ts)
Bud Powell (p)
Curly Russell (b)
Max Roach (ds)
1949年12月11日録音
我らみな神の子
ソニー・サイド
バッズ・ブルース
サンセット
Sonny Stitt (ts)
Bud Powell (p)
Curly Russell (b)
Max Roach (ds)
1950年12月11日録音
ファイン・アンド・ダンディ - テイク 1
ファイン・アンド・ダンディ - テイク 2
ストライク・アップ・ザ・バンド
ストライク・アップ・ザ・バンド
幸福になりたい
恋のチャンスを
Sonny Stitt (ts)
J. J. Johnson (tb)
John Lewis (p)
Nelson Boyd (b)
Max Roach (ds)
1949年10月17日録音
パリの午後
エローラ
ティーポット
ブルー・モード - テイク 1
ブルー・モード - テイク 2
サックス奏者Sonny StittがピアノのBud Powellと組んだカルテットと、トロンボーンのJ. J. Johnsonと組んだクインテットが収録されているアルバムです。ここでは、Powellと組んだカルテットに注目してください。
Stittのテナーサックスの演奏は、Sonny RollinsやLee Morganのような先読み型と違って、直前とのつながりだけでアドリブソロが進んで行く感じがします。その結果、誠実で真っ正直で実にさわやかなアドリブソロを聴くことができます。
Bud Powellのピアノにも注目してください。ピアノトリオは別として、ピアニストの重要な役割はまず伴奏です。Stittのアドリブソロのバックで、合の手を入れるようにピアノを弾いていることからわかります。
しかし曲のメロディを演奏し始めるところや、Stittから引き継いでアドリブソロに入るところに注目して欲しいのですが、彼は伴奏という「脇役」にはちっとも甘んじていません。むしろ、Stittを脇に追いやるような勢いを感じます。
彼のピアノは、どんなに速い演奏でも一音一音が独立していてかつ重く、音のたたずまいに強い存在感を感じます。Powellがそうやってピアノを弾かなきゃならなくなったきっかけは、大きな音を出せるトランペットやサックスに負けないため、という現場での必要性があったのだと思いますが、結果的に高い表現力をもつことになりました。
さらに、即興演奏とはやり直しができないということであり、その瞬間に出す音がすべてという意識にならざるをえません。彼の音楽には、「命がけの真剣勝負」という使い古された表現が陳腐でなくなるような、ただならぬ雰囲気が漂うことになりました。
ジャズの演奏は、もちろんチームプレイなんですが、「さあみんなでなかよく演奏しましょう」ではなく、チーム内での“バトル”が常にあります。ジャズは、そのバトルが音楽の質を高めるという特異な音楽です。これは「仲いいふりして実は...」的な話ではなく、音楽の成り立ちにそういう部分が本質的にあります。
言ってみればジャズミュージシャンは「個人事業主」です。ジャズミュージシャンは、自分の属していたグループがプロデビューするのにともなって自動的にプロになるのではなく、通常は個人でプロになると思われます。そして、さまざまなグループを渡り歩きながら有名になっていくというキャリアの積み方から言って、彼らは個人事業主です。
しかしそれだけではありません。独立した個人としてグループに参加し、演奏においてグループの一員として「歯車」になるのではなく、他のミュージシャンとの摩擦や相互作用を積極的に起こしていくことが、ジャズに独特の緊張感をもたらします。グループ内の他の「個人事業主」との切磋琢磨がジャズの醍醐味なのです。
第7回
#アドリブソロ