「ペンシルパズル」は「紙ペンゲーム」ではない
https://gyazo.com/08b4dd3a1d8c47e4755ee1a13d10e3f8
この記事は
ペンシルパズルアドベントカレンダー2019の
での主張が興味深かったので、考察記事を取ろうと筆をとったものです。
まずは、この記事の前置きとなる2つの記事を参照します
前置き
前置き記事1
https://gyazo.com/69ddd6a018a62a1935d2710e23e9f121
要旨
コンピュータゲームではない、アナログのパズルゲームについての話です。
ペグソリテールやラッシュアワーを例とする、ボードゲームのような1人ゲームをパズルゲームと読んでいる
この記事で、パズルゲームが以下のように定義されています。
ところで、「パズルゲーム」はどんなものを指すのか、自分なりの解釈としての定義をあげます。
1:盤面とコマなどのコンポーネントを用いて、
2:決められたルールから、
3:解答を導けるような問題をたくさん用意できる
前置き記事2
https://gyazo.com/8f85175f9a8a5a9378d288d0cbfef97b
要旨
パズル協会はパズルゲームを認めていないのではないか
取り扱っている会社がないのではないか
ラッシュアワーはパズル協会に所属する会社で取り扱ったこともあり、微妙な関係がある
また、ペンシルパズルについても言及があり、
1:盤面と記号など描かれた印刷物と筆記道具を用いて、
2:決められたルールから、
3:解答を導けるような問題をたくさん用意できる
で、パズルゲームとは1のみ異なる、1もほぼ同じだと言えると、ペンシルパズルとパズルゲームの類似性が話されています。
前半のパズル協会の事情の考察には疑問があるので少し調べてみます。
考察: 実際にはパズルゲームは発売されている
業界の事情については、全くの無知なのですが、
パズルコンテストにラッシュアワーの新作のようなパズルで、商品化できそうなものが応募されなかっただけで、
パズルシステムと問題の組み合わせがないのは偶然ではないかと考えました。
本文中にも言及がある、ハナヤマのかつのうシリーズでは、ペグソリテールのような古典パズルから近年のパズルまで、
デザイナーの名前付きで発売されており、
パズルオーディションの受賞作がかつのうブランドから出ても問題なさそうに思えます。
4x4の詰め碁であるよんろのごが株式会社クロノスより発売されているように、調べると他にも所属企業より発売されているパズルゲームの例はいくつか見つかります。
考察: 募集要項への記載が薄い
パズルゲームがパズルオーディションの受賞作に選ばれなかった、
それ以外の理由として、募集要項をみてみます。
募集欄をみると、
商品として製造、販売できるパズル作品
※“答え”があり、それにたどり着くことを楽しむものが基本です。
相手が必要なもの(ゲーム)や、答えのない積み木やブロックは含みません。
わかりにくい書き方ですが、ブロックに問題と答えのセットを付加したもの はパズル作品として認められそう
に見えます。
けれども、作品の送付の欄にパズルゲームの記載が薄く、
ものを使ったパズルはものを送る or ペンシルパズルは作品の企画を送る、
となっており、応募者がどちらかのその枠組みで企画を考えたからといった可能性もありそうです。
考察: パズルゲームはギミックに加えて問題が必要
また、パズルゲームは基本ギミックに加えて、問題と答えのセットを用意するのが必要ということで、
ギミックだけのパズルより手間がかかることが多く、
2ヶ月弱の応募期間で集まらなかった、などの事情も考えられそうです。
本題
https://gyazo.com/58eb3f2b930c937f0a05d0d1d246e3a7
さて、パズルゲームについての理解が深まったところで元の記事を読みます
コマなどのコンポーネントに関する箇所を、移動、除去できない書き込みとみなすことで
記号(コマ)を描き込むだけ = コマ(記号)は移動も除去もしない
パズルゲームとみなすことができると再度言及があります。
一方で、紙ペンゲームについては、定義についての言及がないです。
議論のために、本文中に言及がないか参照します。
以前、「ロール・アンド・ライト」についてノートを書きました。
こちらの記事を参照すると良さそうです
紙ペンゲームとは
https://gyazo.com/a2ce9c19ced52c000d7cc8ce49676b24
上記記事より、定義部分をまとめると以下になります。
ロールアンドライト
サイコロを振って書き込むタイプのゲーム、「ヤッツィー(Yahtzee)」や「クウィックス(Qwixx)」などが代表例
紙ペンゲーム
すごろくやの「大人が楽しい 紙ペンゲーム30選」が初出か
ボードゲームの専門店・すごろくやが、紙とペンといった身の回りのものだけでみんなが楽しめる秀逸なゲームを紹介。
こちらの説明では、
紙とペンだけを使ったゲームという意味ではなく、特別なコンポーネントを使わない、身の回りのものだけで楽しめるゲームとなっていることに注意です。
ロールアンドライトが紙ペンゲームと呼ばれることについては、
ダイスはゲーム用途にあるものだということを考えると、ダイスゲームが紙ペンに入るのは、トランプゲームが紙ペンゲームに入るような違和感がありますが、
コイントスは身の回りのものに入るだろうし、微妙なところなのかなと思います。
紙ペンゲームの方が広い概念なので、ジャンルとして呼ぶときはロールアンドライトを使っていきたいです。
また、もう一点微妙な例を挙げると、
ストリームスのゲーム性はロールアンドライト系に非常に近いですが、サイコロは使いません、
紙とペンが主ですが、コンポーネントも使用するため、紙ペンゲームには含まれない、といった例もありそうです。
ペンシルパズルは紙ペンゲームか
https://gyazo.com/5e7a6609046b2409f1fe7d314af0e158
元記事に戻ります。
ペンシルパズルはコンポーネントを筆記用具にしたパズルゲームと言える
ペンシルパズルは特別なコンポーネントを使わない1人用の紙ペンゲームと言える
本当にそうでしょうか。
卓上で数独が遊べるパズルゲームなども発売されているため、
多くのペンシルパズルはパズルゲーム化できそうです。こうなるとコンポーネントの材質の差異でしかないです。
配置するコンポーネントの数もマス中に書き込む限り、そこまで変化せず、ゲームの実現には影響しないでしょう。
(それはそうとして、元記事の、ニコリオモパの表出にはスリザーリンクから受け継がれてきた系譜があるといいう話は非常に興味深いところです)
もともとの紙ペンゲームの定義に戻ると、
紙とペンといった身の回りのものだけでみんなが楽しめる
と、もともとの定義は複数人を想定したものとなっています。
パズルゲームに限らずゲームが1人用ゲームに拡張されることはよくあるため、
ソロゲーム用の定義として
紙とペンといった身の回りのものだけで1人でも楽しめる
と言いかえても良いでしょう。
この定義に沿って身の回りのものだけの空間で、数独、スリザーリンクが楽しめるかを考えてみると、
問題がないので楽しむことができなさそうです
ペンシルパズルにはパズル本という特殊なコンポーネントが必要なので、紙ペンゲームには含むことができない。
さっき見た、積み木だけでパズルオーディションに応募できないと同じことです。
また、珍ぬさんの過去記事では、
トランプのようなゲームアイテムに相当するものとして、GameSystemの紹介記事を書かれています。
パズルゲームにおけるブロックやペンシルパズルにおけるルールも、
GameSystemと同様、単体ではゲームではないが、ゲームを生み出すシステム、
もしくはゲームの部分要素として扱えそうです。
結論
https://gyazo.com/9aaafbfda8fd890018827146e7dd898a
記事から考察を深めていくことで
ペンシルパズルは(それ単体では)紙ペンゲームではない
そして、同様に
パズルゲームは(それ単体では)ゲームではない
といった帰結を得ることができました。
また、元記事の「誰が「プレイヤー」なのか?」といった問いかけについても、前述のゲームの構成要素の考えに沿うと、
ルール考案者および作問者がゲームデザイナーで
解き手がプレイヤー
とスッキリさせることができます。
作問者はステージ作成に相当するという意味でレベルデザイナーと呼んでもいいかもしれません。
また、パズルゲームについては、適当なランダマイザで問題を生成できるものがあります。
例えば、ハイパーロボットは盤面とコマがあれば、適当に組み合わせ、適当な位置に駒を置くことで、無から問題を生み出すことができます。
ペンシルパズルでも、盤面に適当に壁を置いた上で置ける戦艦の数を最大化するような、最適化パズルは無から問題を生み出すことができるでしょう。
こういった例は、ルール単体で遊べるゲームといえそうです。
終わりに
ゲーム研究の発達で、ジャンル同士の繋がりがみえてくるのは非常に興味深いです。
今回はパズルゲームとペンシルパズル と紙ペンゲームとロールアンドライトについてみていきましたが、
パズルの枠を離れたアクションゲームのルールとステージの関連との繋がりなど、
まだまだ考えられることは多そうです。
また、今回の話を元にすることで、
ルールだけで問題がないパズル、問題を作ることが難しいパズルはゲームなのかという問いかけもできそうです。
ゲームの境界への理解が深まる良い機会でした。
追記①
元記事の珍ぬさんよりアンサー記事をいただきました。
追記②
竹谷さんより、
現在の紙ペンゲームの定義はもっと広いのではないかとの指摘をいただきました。