時の試練
忘却の濾過槽をくぐっているうちに、どこかへ消えてなくなってしまうものがおびただしい。ほとんどがそういう運命にある。きわめて少数のものだけが、試練に耐えて、古典として再生する。持続的な価値をもつには、この忘却のふるいはどうしても避けて通ることのできない関所である。 この関所は、五年や十年という新しいものには作用しない。三十年、五十年すると、はじめてその威力を発揮する。放っておいても五十年たってみれば、木は浮び、石は沈むようになっている。
本文中では試「練」ではなく、試「錬」であることに注意