文化相対主義
各文化は個々の自然・社会環境への適応を通じて形成されてきたもので,
それ自身の価値を有しており,
したがって互いに優劣や善悪の関係にはないという考え方。
他民族への悪感情による戦争や虐殺といった人類の悲劇への反省,
旧植民地からの新興国家の独立,
多民族国家の形成などの世界情勢のなか,
自民族中心主義に代わって登場し,
20世紀の人間思想における一つの重要理念となった。
例えば国家が多文化主義を推進するには,
各民族や文化に相対的で対等な地位を与えることが前提となる。
また民族自決や地位向上をめざす運動は,
文化相対主義によって民族の尊厳をアピールする。
しかし文化相対主義は,
異なる文化の間には越えがたい差異があって
同一国家での共存は困難であるという
排他的なナショナリズムに用いられることがある。
そのため,文化相対主義と自民族中心主義を単純に二つの対立する理念とは言い切れない。