文化戦争
1980年代以降アメリカで起きている文化的争点をめぐる価値観やイデオロギーの違いに基づく対立を指すことば。具体的には、銃規制、政教分離、同性愛、アファーマティブ・アクション、妊娠中絶などをめぐり国民の間で主張が両極化している状況を表す。91年に社会学者のジェームズ・ハンターが著書「文化戦争(Culture Wars)」を発表して以来、広く使われるようになった。ハンターは著書で、アメリカ国民は文化的に進歩派と伝統派に分かれ、両者の紛争は不可避と論じている。実際に公民権運動、フェミニズムなどを通じて浸透した多様な価値観を許容するリベラル派と、伝統的価値観が失われていくことに危機感を募らせる保守派との対立は70年代に始まっていた。両派の対立は80年代を通じて決定的となり、92年大統領選で共和党の候補指名争いに加わった保守派評論家のパット・ブキャナンは共和党全国大会で「文化戦争が進行中」と演説した。さらに新保守主義を掲げる宗教右派の台頭に伴い、文化戦争はアメリカを分断している。