奇跡
語源的には驚くべきことの意で,一般には神的力に帰される異常な驚嘆すべき出来事をいい,ほとんどすべての宗教に奇跡への信仰がみられる。厳密には超自然的な理由以外には,理性でその原因を説明しえないような自然現象をいう。キリスト教では神の関与によるもののみを奇跡とし,神意の啓示のしるし,保証とみなす。奇跡の可能性については歴史を通じて問題が提出され,アウグスチヌスやトマス・アクィナスらが弁証を試みた。特に B.スピノザ以後奇跡信仰批判が起り,A.ハルナックらの徹底した批判が現れた。今日では精神世界における独特の宗教的経験として奇跡の意味を理解しようとする傾向が強い。