和歌に関する多くの文献は写本・版本で現存しており、教科書で読むような活字になったものは誰かの手によって翻刻・解釈を経たものである
或る国文学者に拠れば、明治以前の和本はすくなく見積もって百万残っており、そのうち活字化されているものはたった一万以下、つまり一%以下に過ぎないと言う。あなたは、あの、筆で書かれた古文書を読めるか。われわれは日本語を知らない、われわれは日本語が読めない。ということにならないか。
古井由吉『仮往生伝試文』文庫版の佐々木中による解説「仮の、往生の、傳の、試みの、文」より