ジャイナ教
ジャイナ教(ジャイナきょう、サンスクリット語: जैन、英: Jainism)は、マハーヴィーラ(ヴァルダマーナ、前6世紀-前5世紀)を祖師と仰ぎ、特にアヒンサー(不害)の禁戒を厳守するなど徹底した苦行・禁欲主義をもって知られるインドの宗教。「ジナ教」とも呼ばれる。仏教と異なりインド以外の地にはほとんど伝わらなかったが、その国内に深く根を下ろして、およそ2500年の長い期間にわたりインド文化の諸方面に影響を与え続け、2019年時点、およそ世界全体で500万人の信徒がいるとされる。 ヴァルダマーナは当時の自由思想家の一人としてバラモン教の供犠や祭祀を批判し、あわせてヴェーダの権威を否定して、合理主義的な立場から独自の教理・学説をうち立てた。サンジャヤ・ベーラッティプッタや釈迦と同様、彼は言語による真理表現の可能性を深く模索した。ヴァルダマーナは、真理は多様に言い表せると説き、一方的判断を避けて「相対的に考察」することを教えた。これがジャイナ教の「相対論」(アネーカーンタ・ヴァーダ、anekānta-vāda)である。 具体的な表現法としては、「これである」「これではない」という断定的表現をさけ、常に「ある点からすると(スヤート、syāt)」という限定を付すべきだとする、「スヤード論」(syād-vāda)を説いた。これによりジャイナ教徒を「スヤード・ヴァーディン」(syād-vādin)ともいう。ジャイナ教は、相対主義を思想的支柱とし、後世「ヴェーダーンタ学派」の不二一元論や「サーンキヤ学派」の二元論、また「仏教」の無我論などと対抗してインド思想史上重要な位置を占めた。 修行生活に関する規定は多くあるが、基本は出家者のための五つの大禁戒(マハーヴラタ、mahāvrata)、
生きものを傷つけないこと(アヒンサー)
虚偽のことばを口にしないこと、
他人のものを取らないこと、
性的行為をいっさい行わないこと、
何ものも所有しないこと(無所有)
書籍