イヤーッ!
小柄な少女が一人、夜道を歩いている。
その後方、数メートル離れて、怪しい人影が少女を付け回していた。時折、何かを呟いている……。
街灯が途切れて少女が暗闇に包まれた時、人影は少女に駆け寄る! その手には、鋭い刃物が!
少女は、振り返って声を上げた!
「イヤーッ!」
普通の人なら、この状況で響く叫び声は、恐怖にかられた少女の「嫌ーっ!」という悲鳴だと受け取る。
ジャンルによっては少女が絶叫と共に怪しい力に目覚めるかもしれない。名作「サルでも描けるまんが教室」では、この『イヤーッ!と叫ぶとボーン!となんかが爆発する』お約束を『イヤボーンの法則』と紹介している*2。 だが、2010年頃を目処にネットミームにおいての「イヤーッ!」は意味が変化した。
悲鳴の意味で「イヤーッ!」と書いたつもりでも、読者は何故か少女の絶叫を恐怖の悲鳴ではなく、決断的なカラテシャウトと解釈し、続くナレーションは『哀れヨタモノはネギトロめいた死体に!ナムアミダブツ!』となってしまうのだ。
この「イヤーッ!」の意味が変わったファクターなんて、誰がどう考えても『ニンジャスレイヤー』である。 もしニンジャスレイヤーが廃れたならば元々の悲鳴の意味合いで「イヤーッ!」と台詞を言わせても良いだろうが、そうでない現在は「キャーッ!」とか「いやぁぁっ!」とでもしないと、読者の脳内で恐るべき少女ニンジャのイクサが始まってしまう。