『荷車と立ちん坊』
近代都市東京の物流と労働
明治のはじめ、荷車の技術的変革は、物流を急速に発達させ、東京の経済発展に大きく貢献した。また、人力輸送の補助力として不可欠だった「立ちん坊」とはどのような人たちだったのか。車輌の製造や管理、道路の整備や日清戦争下の輸送、立ちん坊の生活や賃金など、さまざまな視点から明治社会を掘り起こし、現代にも通じる物流問題の実態に迫る。 目次
序章 荷車曳きのかけ声/近代への胎動(荷車の変革期/変革以前―近世の交通・運輸制度/江戸の大八車と船運/荷車の通行管理/坂道の力自慢)/「くるま」規則の近代化―制度改革(明治の運輸体系―殖産興業と運輸政策/長距離運輸体系の編成/短距離輸送と車税規則/混み合う道路のコントロール)/明治の「くるま」メカ―技術改革(荷車の製造/改造の工夫/荷車の応用パターン)/都心商業地と小運送(新興実業層と物流基盤/樋口一葉の父と荷車運送の組合/運送屋の小僧修行)/路傍の「立ちん坊」(横山源之助がみた荷役労働者/「立ちん坊」がいる場所/「立ちん坊」の生活)/軍隊と荷車(陸軍と輜重編制/日清戦争と荷車徴発/軍役人夫の志願/帰還の余波)/東京近郊の荷車と立ちん坊(那須がみた東京西郊/農業と荷車/街はずれの立ちん坊)/終章 近代都市と物流―経済圏の拡大と動力