43歳の落とし穴
植村直己、河野兵市、長谷川恒男、星野道夫、谷口けい......。多くの登山家・冒険家は43歳で亡くなっている。探検家の角幡唯介さんは「おそらく経験の拡大に肉体が追いつかなくなり、万能感をいだいてしまうのだろう。そうした『43歳の落とし穴』を知っているからこそ、42歳の私はまた北極の探検に向かった」という――。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/04/43-13.php#goog_rewarded
焦燥感
人間、ひとつの物事に打ちこみ四十を過ぎると、経験値があがって様々なことを想像できるようになるため、若い頃には考えられなかった、自分だけの壮大な計画を思いつくことができるようになる。
この〈思いつき〉というやつは、それまでの独自の経験をふまえているだけに、その人ならではのものとなってゆく。...
ところが、その一方で肉体は衰えはじめ、生命体としてのパワーが下降線をたどり、全体的に勢いがなくなり、この過去最高の表現を実現するだけの時間はもうあまりのこされていないとの自覚もめばえる。
その結果どうなるか。当然つぎのような発想になる。
今は身体がまだ動くので、なんとかなりそうだ。なら、身体が動くのこり少ないわずかな時間をつかって、この固有度の高い思いつきを実行しなければならない。