廃墟論
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(画像は新装版)
注:上記「人口廃墟」は「人工廃墟」の誤りと考えられる 目次:
1 だれがデイジー・ミラーを殺したのか
オランダ画家ミヒール・スヴェールス
ローマの円形競技場(コロセウム)
公共広場フォーラム
グランド・ツアー(ヨーロッパ大陸巡遊旅行)
ポーの「永遠の大渦巻き」
ヘンリー・ジェイムズ『デイジー・ミラー』
『コロセウムの植物』
2 つむじ曲がりの楽しみ
古い都市アヴィラ
地主クレヴァドン一族の屋敷
メリダの水道橋
フェリーニの『カビリアの夜』
見捨てられたカンパーニャ地方
チェチリア・メテッラの墓廟
3 忘れられない廃家
ザンジバル島の王女
オズバート・ランカスターの家
ジョン・チーヴァーの『水泳者』
『大いなる遺産』のサティス館
ポーの『アッシャー家の崩壊』
バイロン卿のニューステッド修道院
『チャイルド・ハロルドの遍歴』
4 傘も差さずにエフェソスで
エフェソスの廃墟
カラカラ浴場
シェリーの『鎖を解かれたプロメテウス』
ジョン・キーツの墓
フローベルとメムノンの巨像
ジェフリーの『その後のロンドン』
失われた都市ニンファ
ギベリナの廃墟
アントニオーニの『情事』
5 模範とすべきはかなさ
ミドル級チャンピオンのマーヴィン・ハグラー
人間の死すべき運命と建物の崩壊とのアナロジー
ゴシック風廃墟の評価
自然詩人ジョン・クレア
ウォルター・スコット卿の恋人
風景画家コンスターブルが描いたハドレー城
トマス・ハーディの『ダーバヴィル家のテス』
6 時の難破船
修道院解散法
古物研究家の登場
「ゴシック・リバイバル」
「ウッドストック館」の廃墟
ピクチャレスクと「連想の哲学」
「崇高なもの」と「美なるもの」
ウェールズの詩人ジョン・ダイアー
人工廃墟
7 大まじめに作られた模造廃墟
レプティス・マグナの廃墟
偽古典的な模造廃墟
キュー庭園のアーチ道
オーランドの自然現象博物館
ラジェンスキー宮殿庭園の劇場
ジラルダン侯爵のエルムノンヴィル
廃墟の画家ロベール・ユベール
『廃墟と化したルーヴルのグランド・ギャラリー想像図』
8 廃墟となった自画像
ジョン・ソウン卿ミュージアム
地下聖堂(カタコンベ)
助手のジョセフ・ガンディ
「署名建築」
ピッツハンガー館の廃墟
ソウンの息子たち
「ありのままの手がかり」
ソウンの胸像
9 オジマンディアス・コンプレックス
ロンドンの終末
ギボンの『ローマ帝国衰亡史』
千年至福説
「ヨーロッパの老いぼれ」
若い「新世界」人の登場
風景画家トマス・コール
パスキーノ像
オジマンディアス
10 宙に浮遊する埃
トレドのモスカルド大佐
ドレスデンの聖母マリア教会
オラドゥール・スュル・グラーヌの廃墟
戦争画家諮問委員会
ジョン・パイパー
コヴェントリーの大聖堂
オーフォードネスの廃墟
11 小説家、漁師、そして公爵
ローズ・マコーレーの『世界・私の荒野』
『廃墟の快楽』
ジョン・ハリスの田舎屋敷探索
パレルモの公爵
シチリアの精神性
『私が幼年時代を過ごした場所』
謝辞
原注
訳者あとがき
索引
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廃墟について様々な角度から論じた面白い本。
廃墟はいわば不完全な現実と、それを見る者の想像力との間に取り交わされる対話といってよいだろう。(中略)そこに登場する絵姿は、それぞれの訪問者が想像力で作り出した各人各様の廃墟である。
大まじめに作られた模造廃墟、p.209
ヨーロッパ的・キリスト教的な時間/空間の感覚で廃墟を捉えているため、記述が日本人的な感覚と少しずれる部分があるかもしれない
ヨーロッパの廃墟は「石」のイメージがあり「死」のメタファーととらえられる
日本の環境...雨や自然災害が多く、湿度が比較的高く、植物の成長が旺盛な環境では「廃墟」が存在できる期間はそう長くない
東洋的な時間感覚は、循環的なものや、始まりも終わりもないのっぺりしたものなど