夜もすがら昔のことを見つるかな語るやうつつありし世や夢
『新古今和歌集』・哀傷歌・八二四
詞書
「題知らず」
『新古今和歌集』(角川ソフィア文庫)の注に、『続詞花和歌集』の雑中に「故一条院隠れさせ給ひて、ほど経て夢に見たてまつりて、よみ侍りける」の詞書が載るとある。
作者
大江匡衡
語釈
夜もすがら
すがら
接尾語
《~の初めから終わりまで》という意味を表す。
また、《~途中》や《~のついで》を指すこともある。
例:道すがら
見つるかな
マ行上二段動詞「見」の連用形+完了の助動詞「つ」の連体形+終助詞「かな」
「つ」は完了・強意の助動詞。人為的・意志的な動作を示す動詞につくことが多い。
「ぬ」はこれに比して無意志的な動作を示す動詞につくことが多い。
例
石炭をば早や積み果てつ。(森鴎外『舞姫』冒頭)
時鳥(ほととぎす) 早も来鳴きて
忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ (唱歌、夏は来ぬ - Wikipedia)
語るやうつつ、ありし世や夢
うつつ
目が覚めている状態。現実。
特に「うつつ」というときは、対義語の「夢」が意識されていることが多い。
君や来し我やゆきけむおもほえず夢かうつつか寝てかさめてか(『伊勢物語』六九段)
ありし世
ラ行変格活用動詞「あり」の連用形+過去の助動詞「き」の連体形+名詞「世」
過ぎ去った昔のこと、(亡くなった人が)生きていた時のこと。
ありし世の旅は旅ともあらざりきひとり露けき草枕かな
新古今・羇旅歌・九二三、赤染衛門。
夫匡衡が生きていたころの旅は旅というほどのものでなかった、と回想する詠。
四・五句「や」は、ともに疑問の係助詞。
句の後に「なりけむ」があると考えると(冗長だが)わかりやすいか?cFQ2f7LRuLYP.icon
故人と語りあったのは現実だったのだろうか、それとも存命だったあの時間こそ夢だったのだろうか?
「語るやうつつ」、「ありし世や夢」は対句表現。
現代語訳
夜どおし昔のことを夢に見たものだ。亡くなったあの人と語ったのは現実だったのだろうか?それとも、過ぎ去った昔が夢だったのだろうか。