需要
1. NASA のニーズと資金枠組み
ミッション短縮の重要性
深宇宙探査(火星有人/無人ミッションなど)では、宇宙放射線被曝や食料・ライフサポートの消費を減らすため、航行時間の短縮が最重要課題のひとつ。NASAは宇宙技術ミッション局(STMD)を通じて「高度推進技術」(Advanced Propulsion)に定期的に資金を投入しており、電気推進や核熱推進、ビーム推進といった研究開発に(概算で年数千万~1億ドル規模の)予算を割いています。
受注の形態
NASA は「SBIR/STTR」「NASA Research Announcement (NRA)」「Tipping Point」など多様な公募プログラムを用意。これらに応える形で、中小ベンチャーから大手産業までが技術提案を行い、フェーズごとに資金を獲得して技術成熟度(TRL)を高めていきます。
→ 結論:NASAレベルでは“研究・開発”用途の公募案件は多数あるが、すぐに「打ち上げ搭載用の10倍高速ロケット」の大型受注が来るわけではなく、まずはTRLを積むステップが求められます。
2. 商業ロケット企業の視点
SpaceX / Blue Origin / ULA 等
彼らは現状、コスト削減および再使用性の向上にリソースを集中させているため、「速度10倍」のような劇的高Δv推進系を自社で開発し製品化する動きはまだ活発ではありません。
“委託開発”の可能性
ただし、Deep Space Gateway(Lunar Gateway)や月面輸送、火星ミッションを狙うベンチャー企業(例:Momentus, Rocket Lab の Photon ミッションなど)が、サブシステムとして高I_spエンジンを外注調達する例は増えています。
→ 結論:大手は自社技術の成熟度を重視し、中小ベンチャー/スタートアップ経由で“モジュール受注”する形が主。いきなりロケット丸ごとの10倍化ではなく、推進サブシステム単位での採用がステップになります。
3. まとめと戦略提言
短期(~5年)
NASA 公募(SBIR/STTR/NRA)への応募で、TRL 3→5 程度の技術実証プロジェクトを狙う。
電気推進やビーム推進のモジュール単位でベンチャー企業へ提案書を送付。
中期(5~10年)
成熟したサブシステムを活用し、月面〜火星トランスファー航行機のデモミッションに搭載。
大手とのパートナーシップ/JV 化で大型受注を狙う。
このように、“10倍速度”自体はニーズが明確に存在しますが、まずは「推進モジュールをステップ的に供給/実証」するルートがもっとも現実的です。大型ミッションの搭載案件を得るには、まずTRL を上げつつNASA・ベンチャー双方のパイプラインに参入する戦略をおすすめします。