京都の食文化
京都人の定義について、「はじめに」では「『京』に住み暮らす人びと、くらいの意味で使おうと思う」としているが、取り上げられる「京」のほとんどは京都の市街地とその周辺である。日本海側や南部の宇治、伏見などはむしろ「京」の郊外として周縁的に扱われている。 1章、2章までは京都の風土や歴史と食文化の形成を関連づけながら語っているが、3章以降は現代の京都人の暮らしと食についてのエッセイのようになっていく。 エッセイならば、「京都生まれではない」著者が京都人や京料理についてどう思っているのかなどについてもっと語ってくれてもよかったのにと思ってしまう。京野菜の出自などについて語る箇所は面白かった。農学者である著者の本領はむしろそっちなのだろう。