イラストのナラティブ対比について
#つらつら
https://scrapbox.io/files/68ffab61251b5a4020c85bf2.png
イラストにおいて対比(コントラスト)というと、影と光の明暗差や構図関係の諸々が連想されるが、割と見落とされがちなのが絵のナラティブな側面においての対比、所謂ナラティブ対比である
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ナラティブ対比とは何か?
超平たく言うと「ギャップ」のこと
一見関連性のない要素を互いに混ぜ合わせることで、複雑な情緒や側面、ストーリーを生み出すことができる
絵を見る側に若干の違和感・異常性を残すことができるので、その原因を解消するために深く見入ってもらいやすい
それぞれが持つイメージや特徴が全く異なるものを二つチョイスし、その要素を滑らかに盛り込むことが基本
また、対比というが、べつに必ず対になっている必要はなくて、「何もない」ことと「異常性」が対比になることもある
なんなら、平坦な要素に異常性を雑にぶち込むだけでも受け手側が勝手に想像を膨らませてくれることもある
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なんで今回このつらつらを書こうとと思ったかというと、
このナラティブ対比の使い方がうまいと、 Xという拡散の環境でべらぼうに優位に立つことができるからだ
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https://scrapbox.io/files/68ffa2afc3a201a336ad6c35.pnghttps://scrapbox.io/files/68ffa28aeccac2c00774df8c.png
tetto(やさしいせかい)氏の作品
どちらも10万ふぁぼを軽く超えた作品で、同時に彼の代表作のうちの二つ
「地雷系・・・劣悪な家庭環境、過去に思いトラウマ、かわいい、裏がある」な印象が持たれがちな要素と、
「親切・・・お年寄りに席を譲る、キャッチしたボールを子供にあげる」という要素をぶつけることで、
「見た目は普通ではなく浮いているけれど、ずっと笑顔で親切でいい子」というナラティブ対比が見事に刺さっている
特に二枚目の絵では、主人公の女の子とその他二人の同乗者でナラティブ対比を成立させている。
一人目・・・活発な地雷系女子と、年寄りがいるのにスマホを見続け譲るそぶりも見せない手前の眼鏡男。
二人目・・・プリキュア属性のある女子と、それに憧れる怪獣物のソフビを持った少年。
メインに据えたテーマも「地雷系」と非常に令和的で若者からの支持が厚いコンテンツ。
ここから更にそれに属していない「地雷系=不安定」なイメージを持つ人にも「親切」という逆要素で取っ掛かりを打消してエンゲージしやすい。あまりにも万人受けを狙いやすいコンテンツが完成している
この「何を組み合わせようか」というナラティブ対比のアイデアの面白さが本当に作品の根本の良さに響いてくる
そしてもう一つナラティブ対比の利点があって、「リプ・引用が増える」ということ。
先ほど紹介した二枚目の絵につけられたリプ引用の内容を分析すると、主人公の可愛さや画力の高さよりも、二人の同乗者に関する感想や小ネタに多くリプ引用が殺到していたことが見受けられた。
さほど難解ではない考察要素は大衆に気づきをひけらかさせる力を持っている。
つまり、少なくともXで見る側が求めているコンテンツの中には、
度肝を抜かれる超絶画力の力作や性癖に刺さる作品と同じくらい、いかに自分を楽しませてくれようかというコンテンツもあるということなのだ。
今は引用RTやRPがイラスト投下直後に極端に少ないとエンゲージメントが下がる仕様らしいので、昔以上にユーザからの積極的な反応は受け入れる必要がある。
(...続きあれば後日...)