ジョブ理論
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イノベーションとは本来、もっと予測可能で、もっと確実に利益をあげられていいはずだ。必要なのは、ものの見方を変えること。
だいじなのはプログレス(進歩)であって、プロダクト(商品)ではない。
「どんなジョブ(用事、仕事)を片づけたくて、あなたはそのプロダクトを雇用するのか?」
私たちが商品を買うということは基本的に、なんらかのジョブを片づけるために何かを「雇用」するということである。
「そう、ミルクシェイクだ。濃いからさ!ストローだと20分ぐらいかかる。中身がどうとか、知ったことじゃない。おれはね。昼飯まで腹がもてばいいんだ。車のカップホルダーにもぴったりだし」
幹部陣のまわりには自社製品のデータが氾濫している。市場シェアの細かい数字も、市場ごとに売れ行きがどうちがうかも、何百種類もの項目ごとの利益率も よく把握している。
しかしこうしたデータは、顧客と商品そのものにフォーカスしていて、その商品が顧客のジョブをどんなふうに解決しているかについては教えてくれない。自社製品に対する顧客満足度も、顧客のジョブをよりうまく片づける方法についての手がかりは与えてくれない。
それなのに、多くの企業が顧客満足度をつうじて、成功を追跡し測定しようとする。
ジョブの解決という行為を体験と結びつけることは、競争優位を獲得するうえできわめて重要である。
なぜなら、競合相手にとってプロダクトの模倣だけなら簡単にできてしまうが、自社のプロセスに強く結びついた体験を模倣することはむずかしいからだ。
ジョブの定義
「ジョブ理論の中核には、単純だが強力な知見が込められている。顧客はある特定の商品を購入するのではなく、進歩するために、それらを生活に引き入れるというものだ。この「進歩」のことを、顧客が片づけるべき「ジョブ」と呼び、ジョブを解決するために顧客は商品を「雇用」するという比喩的な言い方をしている。この概念を理解すれば、顧客のジョブを発見するという考え方が直感的にわかるようになる。
進歩
われわれはジョブを、「ある特定の状況で人が遂げようとする進歩」と定義する。重要なのは、顧客がなぜその選択をしたのかを理解することにある。
状況
ジョブの定義には「状況」が含まれる。ジョブはそれが生じた特定の文脈に関連してのみ定義することができ、同じように、有効な解決策も特定の文脈に関連してのみもたらすことができる。ジョブの状況を定義するにあたり、重要な質問はたくさんある。
「いまどこにいるか」
「それはいつか」
「誰といっしょか」
「何をしているときか」
「8分前に何をしていたか」
「次は何をするつもりか」
「どのような社会的、文化的、政治的プレッシャーが影響を及ぼすか」
ジョブを定義するのに(その解決策を見つけるためにも)状況が不可欠なのは、なし遂げたい進歩の性質が状況に強く影響されるからだ。
われわれの経験に照らすと、マネジャーたちはたいてい状況を考慮しない。むしろ彼らは、イノベーションを探索する旅のなかで、次の4つの原則にとらわれる。
・プロダクトの属性
・顧客の特性
・トレンド
・競争反応
どれが悪いとかまちがっているというものではない。だが、こうした原則を追求するだけでは不充分であり、顧客の行動を予測することはできない。
ジョブを理解するうえで、ある思考実験が役立つことに気づいた。特定の状況で進歩を遂げようと苦心している人を、短編ドキュメンタリー映画ふうに頭のなかで撮影してみるのだ。
エアービーアンドビーの投資者であるリード・ホフマンは語る。「だが、いまこのときに見えていなくても、ジョブが存在することもある」
だがジョプ理論のレンズを通すと、市場で同じカテゴリにくくられているプロダクトだけに競争相手が限定されることはほとんどない。
ネットフリックスはアマゾンと競っているのかと問われ、こう答えた。「リラックスのためにすることな ら、なんでも競争相手だ。ビデオゲームと競い、ワインを飲むこととも競う。じつに手ごわいライバ ルだね。もちろん、ほかの動画配信サービスとも競う。ボードゲームで遊ぶこととも」
プロダクトを売ることからジョブに応えることへシフトしたのだ。
ジョブ理論は、消費者がさほど困っていなかったり、存在する解決策で充分間に合ったりするときには役に立たない。
商品取引のように、ほぼすべてが数学的分析によって決定される場合にも有益でない。
コストや効率は、ジョブ理論でいうジョブにとって中核をなす要素ではない。
そのような状況では、進歩を遂げるための社会的、感情的、機能的側面をとり混ぜた複雑なニーズがない。
現状では満足な解決策が存在しない「無消費者」も含まれ、彼らはジョブを不満足に片づけるよりは、何も雇用しないほうを選ぶ。無消費に眠る好機は企業にとって巨大だ。
まずは、すぐ目のまえにあるかもしれないジョブを明らかにする方法を紹介する。ヒントは身近な生活のなか、無消費に眠る機会、間に合わせの対処策、できれば避けたいこと、意外な使われ方、の 5つだ。
ジョブを満たす解決策を見つけられず何も雇用しない道を選ぶことを、ここでは「無消費」と呼ぶ。
企業は他社から市場シェア を奪い取ることばかりに気をとられがちで、目に見えない需要が大量に眠っている場所のことは考え ない。既存のデータからはその場所を知ることはできないため、そうした需要の存在に気づくのは容易ではない
からの成人用オムツの話。
気づかれにくいがきわめて強力で、同時に作用する力がふたつある。
ひとつは現行の習慣で、これは消費者の行動に大きく影響する。現状に満足はしていないが、少なくとも、いまのやり方に慣れているという、問題の存在に慣れた状態だ。
もうひとつは、現行の 習慣よりも強力な、変わることや新しいことへの不安である。「もしもうまくいかなかったらどう する?」
消費者は、現行の習慣にはまりこんでしまい、新しい解決策に乗り換えると考えただけで怖じ気づくことがよくある。
じゃあどうするか
それを緩和するような体験を用意することができる。新しいものへ の移行に不安があるのなら、それを最小化する
ノーベル経済学賞受賞のダニエル・カーネマンも指摘したように、古いものに引きずられるこ とは、新たな熟慮検討が不要で、解決策として一定の妥当性があることが感覚的にわかっている。
損失回避に働く力は利得の魅力よりも心理学的に2倍強い 機能しか提供できない解決策はたやすく解雇される。
一方で感情的および社会的側面が深くかかわる解決策は、解雇されにくい。
現状にいくら不満があり、新しい商品がいくら魅力的でも、何かの雇用へと引っぱる力が、ためらわせる力よりも大きくならないかぎり、人は新しいものの雇用を考えようとしないのだ。
顧客は、たとえ不満足な解決策を耐えしのぶ状況であっても、もっといい何かが手に入ると確信できるまで、解雇には躊躇する
顧客の行動について集めたデータは、客観的に見えてもじつは偏っている
データはとくに、ビッグ・ハイア(顧客がなんらかのプロダクトを買うとき)だけを重視し、リトル・ハイア (顧客がなんらかのプロダクトを実際に使うとき)を無視
解決したかどうかは、リトル・ ハイアが一貫して繰り返されることによってしか確認できない
顧客が新しいプロダクトを雇用するまえに、それと引き換えに何を解雇する必要があるかを理解すること
雇用の裏ではつねに何かが解雇される
顧客のジョブを明確に理解できたと考える根拠は何か。
顧客がリトル・ハイアとビッグ・ハイアをおこなっている証拠はあるか
顧客が苦労している状況から、現在の解決策を解雇し、最終的にあなたの解決策を雇用する(ビッグ・ハイアとリトル・ハイアの両方)までの、完全なストーリーを語れるか
潜在顧客があなたのプロダクトを雇用するのを妨げる力は何か
自社製品が実際のところ何と競っているのかを理解して初めて、顧客にとって重要な体験を構築することができる
顧客がプレミアム価格を支払う状況のなかには、彼らがすでに雇用しジョブを片づけている商品と連動しているために仕方なくそうしている場合がある。
プリンターのインクの目玉の飛び出るような値段。あるいは、スマートフォンの充電器やケース。
ほかによりよい解決策がないので仕方なくプレミアム価格を払う
こうした品々は、ジョブを解決するというより、不安感の種になる
逆に
ジョブをベースにしたイノベーションなら、顧客は高い値づけをいとわないし、解決策を得られたことに喜びを感じる
「ジョブはイノベーションの道筋を明快に教えてくれる」
「今後1年間でど んなふうに改良しなければならないかもわかる。プロダクト指向は薄れ、いまはプロセス指向だ」
「軽い気持ちで体操クラブに申しこんだのに、 いざその場に行ってみたら、エベレストに登ってもらうと言いわたされたような気持ちを味わってほ しくない」
ジョブを重視した組織が得られる4つのメリット
明確な目的を共有し、意思決定を分散できる組織の全社員が、ジョブにフォーカスした適切な決断を、創造力豊かに、しかも自律的に下すことができる。
重要なことに資源を配分し、重要でないことからは資源を解放できる。
社員のやる気を引き出し、彼らが好きなことをできるような文化をつくり上げる。
顧客の進歩、社員の貢献、意欲など、重要な点を測定できる。
気をつけること一つ目
私たちを動かすものすべてが、片づけるべきジョブではない
あなたや同僚が片づけるべきジョブを形容詞や副詞で説明しているとしたら、それは有効なジョブではない
たとえば「便利な」 は、顧客が競合他社ではなくあなたのプロダクトを選ぶ理由ではあるかもしれないが、ジョブではない
明確に定まった「片づけるべきジョブ」は、動詞と名詞で表現できる。
「手作業でタイプしたり編集したりしなくてもいいように、本を口述で書く必要がある」はジョブ
「もっと正直にならないといけない」は、 立派な目標だが、ジョブではない
気をつけること二つ目
ジョブには適切な抽象度が必要であるということだ。
求めるプロダクトの構造が同種のプロダクト群のなかでしか満たされない場合には、そこに片づけるべきジョブのコンセプトは適用されない。
同種のプロダクトでしか問題を解決できないのなら、それはジョブではない
人生のジョブ
私たちが政治家を選出するのは、どんなジョブを片づけてもらうためだろうか。みずからが選挙民に雇用された理由だと政治家が考えるジョブは何か、政治家を雇用して片づけたいと投票ブースのな かで私たちが考えるジョブは何か。はたしてふたつは整合しているか。私たちはリーダーを雇用して いるのか。あるいは不安に声を与えてくれる人を雇用しているのか。第8章で、ピーター・ドラッカ ーの有名な警告、「企業が売れると思ったものを顧客が購入することはめったにない」に触れたが、 有権者と政治家のあいだにも似たような断絶がある。だから社会奉仕してもらうために選出した人に 有権者は不満を抱えつづけるのだ。
教会やその他の礼拝所へ行く機会があれば、この断絶について考えてみてほしい。片づけるべきジ ョブ理論なら、多くの教会が信徒を維持するのに苦労している理由を説明できる。彼らの人生に生じたジョブを、そのために教会を雇用するかもしれないジョブを、教会は汲み取る感覚を失っている。
世界を新たな発想のもとで見ようとするとき、ジョブ理論がどれほど助けになるか、言いたいことはまだ尽きない。優れた理論は、何を考えるかを知るためのものではない。どのように考えるかを知るためのものだ。