鏡と窓
鑑賞する"なにか"があるとき、それは私を映す鏡なのか、それとも何かを見せてくれる窓なのかが重要な議論になることがある。
1978年7月28日から10月2日までニューヨーク近代美術館(MoMA)で開催された、60年以降の写真表現の動向を扱った展覧会。企画を担当したジョン・シャーコフスキーは、100名の作家による200点余りの作品を選び、それぞれを「鏡派」と「窓派」に分類して提示した。「鏡派」は写真を自己表現の手段として用いる写真家のことで、「窓派」は写真を通して外界を探究する写真家のことを指す。しかし、シャーコフスキー自身が述べているように、この二つは不連続な関係にあるのではない。どの写真のなかにも二つの側面が存在しているのであり、1枚の写真を鏡派か窓派かのどちらかにのみ分類することは不可能である。こうした曖昧さを孕んだ分類をシャーコフスキーがあえて提示した背景には、当時の写真評論にみられた、「ストレート・フォトグラフィ」と「マニピュレイテッド・フォトグラフィ」を二項対立させることによって写真表現を分類しようとする傾向への抵抗があった。なお、展示作品にはシルクスクリーンやリトグラフ、立体的に構成された作品も含まれており、絵画、版画、写真などのジャンルを超えて制作を試みる作家が多く登場していた当時の状況が如実に反映されている。写真という一分野にとどまらず、美術界全体の変容を扱ったものとしても注目すべき展示であった。ニューヨークでの展示の後、アメリカ国内の7カ所を巡回している。 こちらは Mirrors and Windows
原題が『Windows and Mirrors』