バルザック「幻滅」の箴言
藤原書店の「バルザック『人間喜劇』セレクション」シリーズの「幻滅——メディア戦記 上、下」(訳:野崎歓、青木真紀子)を読んでいる。以前に同シリーズの「ペール・ゴリオ——パリ物語」を読んだことがあり、「幻滅」でバルザックを読む二作品目になる。バルザック作品には、蘊蓄や箴言が沢山でてきて面白いのだが、その中で心に響いたものをひとつ書き留めておく。
めまぐるしい毎日のただ中にあって計画を立てる力とは、詩人や意志の弱い人間や単なる才人などにはとてもまねできない、強固な意志の刻印である。 (下巻、528ページ)
これは、主人公の詩人リュシアンがパリ社交界でもてはやされると同時に、詩人としての志を失っていく様子を描写する中で出てきた表現。今日の大学教授にも当てはまる言説だと思い、身につまされた。スポーツなど他分野でもそうなのだろうが、「単なる才人」であるだけでは成功するのに十分でなく、「強固な意志」に基づく努力の継続が必要だということだろう。