肉敗熱を取り除き療気をおさえるための医学的処方、存在の内奥において進行する腐敗の生み出す形而上学的不安、ナルシシズムの上昇とそれが喚起した嗅覚的自由への渇望、自我の存在と世界の調和を明かす自然の匂いに絶えず気を配ろうとする意志、当時まだ不明瞭で未分化だった社会的発散物によってひきおこされた恐怖、こうしたものがやがて一つに合流し、十八世紀の中頃から実行に移された悪臭追放の戦略を推進していくことになる。