組合せ同値
読み:くみあわせどうち
英語:〔名〕combinatorial equivalence, 〔形〕combinatorially equivalent
多面体や多胞体、ひいては複体などの分類基準の一つ。あんまり習わないが、無意識に使っているはずだ。
以下、不完全なお話に逃げる。
この図形とあの図形が同じだの違うだのと云々するにあたって基準が色々ある。中学校までに合同や相似を習うことは有名だね。また抽象度を増したものとしてアフィン同型、位相空間の同相(別名:位相同型)、グラフ理論のグラフ同型なんてのもあるね。多面体の組合せ同値はそういうものの一種だ。
例えば太郎君は、三角形を正三角形と(正でない)二等辺三角形と不等辺三角形の3種類に分類したい。これには等しい辺の組がどれだけあるかを見ればいい。また、太郎君は長方形と(長方形以外の)平行四辺形を区別したい。そのためには角度を見たり、対称軸の本数を見たりすればいい。
これらは小学校でも見かける分類法だが、合同とも相似とも異なる基準で行われていることに気づいていたかな。
まあそれはおいといて。
一方で、次郎君は、三角形はみな同じものだと思っているので同一視したい。四角形はみな同一視したい。でも三角形と四角形と五角形は区別したいと思っている。このような多角形の分類には角の数(=辺の数)を使えばいい。同相ではみな同じになってしまうのでゆるすぎる。
さらに、次郎君は、3次元多面体を分類したくなった。
次郎くんの考えでは、立方体と直方体は同一視したい。三角錐はみな同一視したい。でも、三角錐と四角錐は区別したい。また、三角柱と四角錐はどちらも5面体だけれど、区別したい。さて、この分類の基準はなんだろう? 頂点・辺・面の数(→ f 列)だけでうまくいくかな?(ごめん、この例示ではどれもうまくいってしまっている。脚注 *1) この次郎君が想定しているであろうものが組合せ同値だ。
5面体は組合せ同値を基準にすると2種類に大別される。四角錐と呼べるものはみな合わせて1種類。四角錐でないものはみな、三角柱に組合せ同値なものという1種類をなす。頭を斜めに切った三角錐は後者に分類される。
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特徴
多角形では、角の数による分類と組合せ同値の分類は一致する。
立方体は直方体、平行六面体、四角錐台などと組合せ同値。
鏡像異性体は区別できない。
文献
M.アイグナー, G.M.ツィーグラー, 蟹江幸博(訳):『天書の証明 原書6版』, 丸善出版 (2022), 82ページ
一般次元の多面体に対して「組合せ同値」が定義されている。
G. P. Michon, Counting Polyhedra, (2000-) 3次元の凸多面体を数えている。分類基準を “topologically” different (“位相的に”異なる)と言い回しているが、その意味するところは同相ではなく、組合せ同値のことだろう。
これは各マスに書かれた数だけ、f 列では区別のつかない多面体があることを示している。
脚注
*1 f 列が一致してしまうが組合せ同値ではない2つの多面体の組 (P, Q) を挙げる。
8面体の例。正方形を底面とする wedge を2つ用意し、底面同士を貼り合わせてできる立体は2通り。「棟」が平行なもの P と、「棟」が90度ずれているもの Q 。(V, E, F)=(8, 14, 8) 面の数は最も少なくて6。 の表を見ればわかる3組。名前が訳せないorz